個票データを用いる消費・貯蓄関数の実証分析において、説明変数である資産や期待所得については、調査対象者からの未回答等のため欠損値となることがある。従来、この欠損値に対して、「独立の仮定」を課すことによって、説明変数の係数を推定する方法を取ることが多い。しかし、この「独立の仮定」が成立しないときには、説明変数の係数の推定値にバイアスが生じる。本研究は、Manskiによる部分識別の方法を発展させ、説明変数の欠損値に「独立の仮定」を課さずに、説明変数の係数を入りうるバウンド(領域)として識別する方法を開発した。さらに、識別した係数のバウンドを推定する方法を開発した。
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