前年度に引き続き、動学的競争の枠組みの中で、特に、3名以上の固定されたメンバーを複数回競争させて最終的な成果を競わせるという問題意識において、各回1対1の対戦をして競わせる状況設定、および各回ペアで協力して成果を発表させる状況設定の主に2つについて、動学的なインセンティブの構造やルールの最適設計などについて分析を行った。
前者は対戦型のスポーツ競技などに近い問題設定である。中でも「勝ち抜きトーナメントの最適設計」など基本的な問題意識については最近10年程度の間にさまざまな先行研究によっていくつかの特長が明らかにされており、また、オークション理論における全支払入札の基本モデルを援用する形で分析を行う基本モデルの形も共通の理解が形成されている。これらの先行研究の流れに沿って、勝ち抜きトーナメントではなく何度も対戦が行われる設定のもとで、「パフォーマンスの最大化」という目的での対戦相手の最適選抜や日程(対戦順)の最適設計などについて一定の成果を得た。
後者は対戦型のスポーツ競技などとは異なり、一度に単一人物(もしくは単一チーム)が成果を発表しその成果の積み重ねによって期末に勝者(もしくは上位者)を表彰するという問題設定である。このような枠組みは共通の基本モデルとよべるものの合意がまだ学界内で形成されておらず、あくまで限定的な設定のもとではあるが、ペアの最適選抜については対戦型のモデルにおける「対戦相手の最適選抜」とはかなり異なる特徴を有することが明らかになった。
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