研究課題/領域番号 |
25380232
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
寺地 伸二 山口大学, 経済学部, 教授 (10263758)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 規範 / 制度 |
研究実績の概要 |
企業にたいして、法律や社会規範の順守、つまりコンプライアンスが求められるようになった。しかしながら、経済学の理論においては、株主のために利潤を最大化することが企業の目的であるという考え方が支配的であり、コンプライアンスをその中心にすえているわけではない。社会の要請に対応して、新たな経済理論を構築する必要がある。 「法と経済学」の分野では、法を守ることで得られる金銭的便益と、法を破ることで被る金銭的費用との比較で人間行動をとらえてきた。法律は形式的に定められたルールであるのにたいして、社会規範は非形式なルールであり、たとえ社会規範を守らなくても法的罰則を受けるわけではない。非金銭的な要因を重視する「行動経済学」の研究成果を使って、人間行動の理論を拡張することで、経済秩序における社会規範の必要性を明らかにする。 人々は社会規範から逸脱することで、罪悪感などの負の感情を抱く。こうした負の感情の発現プロセスについて、経済主体による社会規範の内在化から解明していく。さらに、社会規範の順守を継続することで、名声あるいは社会的イメージを形成していくプロセスを動学モデルによって考察する。このようにして、社会規範を守るためのインセンティブのミクロ的基礎づけを行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、コンプライアンスを、関係する法律を守るだけでなく、社会規範の順守まで広くとらえて、経済主体がコンプライアンスを強化していくメカニズムを分析する。まず、法律だけでなく社会規範がなぜ必要なのかを経済学的に明らかにし [Phase Ⅰ]、次に、社会規範に沿って行動するインセンティブを検討する [Phase Ⅱ]。最後に、ルールを守らせるというエンフォースメントとして、第三者による利他的懲罰を考察する [Phase Ⅲ]。
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今後の研究の推進方策 |
直接の関係者ではない第三者であっても、社会規範の逸脱者を罰する意思がはたらくことがある。こうした利他的懲罰が自生的に発生するメカニズムを理論的に考察する。最終的には、社会規範を守る側と守らせる側との相互依存関係をゲーム論的に明らかにし、効率性の高い状態で人間社会を運営していくためのシステム設計を提示する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、研究のため訪問する予定であった研究機関の都合により、キャンセルとなった。そのため、未使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
研究出張旅費に使用する。
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