研究課題/領域番号 |
25380236
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
水上 英貴 青山学院大学, 経済学部, 准教授 (30377238)
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研究分担者 |
若山 琢磨 龍谷大学, 経済学部, 准教授 (80448654)
ニ本杉 剛 岐阜聖徳学園大学, 経済情報学部, 准教授 (10616791)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 経済理論 / ゲーム理論 / 遂行理論 / メカニズム・デザイン / 行動メカニズム・デザイン |
研究実績の概要 |
従来の完備情報下でのメカニズム・デザインでは,人々の行動原理としてしばしばナッシュ均衡行動が仮定されてきた.しかしながら,人々が必ずしもナッシュ均衡行動を行動原理としてとっているわけではないということが,最近の実験経済学の研究成果からわかってきている.実際,我々の最近の実験結果においても,ナッシュ均衡で想定しているような行動をとる被験者ももちろん存在するが,そうではない行動をとる被験者も少なからず存在することが観察された.
ナッシュ均衡行動以外の行動原理として,メカニズム・デザインに関する我々の実験でしばしば見られた被験者の行動原理は,マキシミン行動であった.被験者の合理性を前提に最適反応戦略を選択するという行動原理以外にも,安全を重視してマキシミン戦略を選択するという行動原理が数多く観察されたのである.この実験結果は,理論研究においてこれまでしばしば仮定されてきたように,ナッシュ均衡行動をとる人々はもちろん存在するのであるが,ナッシュ均衡行動以外にマキシミン行動をとる人々も現実には数多く存在している可能性を示唆している.そこで本研究では,ナッシュ均衡行動だけではなくマキシミン行動も人々が行動原理として採用していると仮定し,これらの行動原理に対して頑健なメカニズムの方がそうでないメカニズムよりも高いパフォーマンスを示すのかどうかを検証する.
本年度は,昨年度に設計したこれらの行動原理に対して頑健なメカニズムの性能を,本実験 (被験者を用いた経済実験) を行って検証した.その結果,ナッシュ均衡行動とマキシミン行動を合わせたタイプの行動を行動原理としてとっていると考えられる被験者が数多く観察された.この行動原理は,Morgan and Sefton (2002) による経済実験でも見られたものであるが,メカニズム・デザイン理論ではこれまではほとんど注目されてこなかったものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は,ナッシュ均衡行動およびマキシミン行動という二つの行動原理のいずれかを人々は採用していると想定し,これらの行動原理に対して頑健なメカニズムの方がそうでないメカニズムよりも高いパフォーマンスを示すという仮説を検証するものである.そのために,(a) これらの行動原理に対して頑健なメカニズムを設計し,(b) そのメカニズムの性能を被験者を用いた実験で検証していく.
本年度は,昨年度に設計したメカニズムの性能を経済実験によって検証した.その結果,ナッシュ均衡行動およびマキシミン行動のどちらでもない行動を行動原理としてとっていると考えられる被験者が数多く観察された.
そこで,「多様な行動原理に対して頑健なメカニズム」として,これら二つの行動原理以外の行動原理も考慮した新たなメカニズムを設計し,2016 年度にその性能を経済実験によって検証することとなった.
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今後の研究の推進方策 |
2015 年度に実施した経済実験で観察された新たな行動原理に対しても頑健なメカニズムの性能を,次年度に検証する.
まずは,被験者に対して報酬を支払わないプレ実験を次年度の前半に実施する予定である.そして次に,被験者に対して報酬を支払う本実験を,青山学院大学の学生を被験者として次年度の後半に実施する予定である.その後,実験結果の分析を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
2015 年度に実施した本実験で,被験者の行動から,メカニズムの満たすべき頑健性として我々がこれまでは考慮していなかった新たな性質を考慮すべきかもしれないことがわかった.その新たな性質を満たしたメカニズムの方が「多様な行動原理に対して頑健なメカニズム」として優れているかどうかを検証する追加実験を,2016 年度に実施するため.
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次年度使用額の使用計画 |
プレ実験および本実験の実施・結果分析のための打ち合わせで使用する予定である.
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