平成27年度は研究計画に基づき、以下の点について研究を行った。 1.ナイト的不確実性下での情報の更新の研究:平成26年度から執筆し、改訂を続けてきた、ショケ期待効用における情報による認識改訂についての研究を完成した。これは、確率的推論に変わる新しい不確実性下の推論として研究が著しく発展中のショケ期待効用に対して、確率理論の条件付確率に対応する概念を作り出す研究である。重要な改訂方法として、Naive-Bayes改訂、Dempster-Shafer改訂、Fagin-Halpern改訂の三つが提唱されているが、これらを統一的に公理化する方法を開発した。さらには、前の二つに対しては、推論の改訂において問題になっているdynamic consistencyとの関係をはっきりさせた上で、dynamic consistencyをぎりぎりに制限しての公理化を行った。この論文は、現在、国際的英文学術誌に投稿し、審査中である。 2.素事象の分離性を基礎とした不平等回避の公理化の研究:平成26年度から研究し、十分な議論を続けてきた、素事象の分離性を基礎とした不平等回避の公理化の研究を完成し、論文を執筆した。この研究は、Machinaが提唱した事象の分離性を、ショケ期待効用の枠組みでの素事象の分離性に発展させ、それを公理化したものである。この公理系によって、GilboaのVariation回避や、Rohdeの不平等回避を統一的に公理化することができる。そればかりではなく、もっと多様な構造の不平等回避をも、容易に公理化が可能となる。この論文は、精密な改訂の上、近日中に投稿の予定である。
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