研究課題/領域番号 |
25380244
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
若山 琢磨 龍谷大学, 経済学部, 講師 (80448654)
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研究分担者 |
星野 裕二 (藤中 裕二) 大阪経済大学, 経済学部, 講師 (20552277)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | メカニズムデザイン / 経済理論 / ゲーム理論 / マーケットデザイン |
研究概要 |
本研究は,「耐事前交換性」という新たな性質を考案し,その性質を備えた腎臓交換メカニズムの設計を試みる.腎臓交換メカニズムを使って患者とドナーを組み合わせる際,より質の高い腎移植を望む二組の患者間で,偽装結婚や偽装養子縁組などを通してドナーを事前に融通し合い,メカニズムの結果を操作する可能性がある.耐事前交換性は,そうした共謀を未然に抑止するものである.メカニズムがこの性質を備えていなければ,本来受けることのできた患者の移植機会が阻害される恐れがある.また,腎移植を目的とした偽装結婚や偽装養子縁組を法律で完全に防ぐことは難しいものの,メカニズムが耐事前交換性を備えていれば,その種の共謀行為を未然に防止でき,メカニズムの安定的運営が脅かされる心配はなくなる.さらに,移植を切望する患者に,偽装結婚や偽装養子縁組などの手段を取らせる必要がなくなることから考えても,この性質をメカニズムに要求することは重要であると考えられる. 2013年度は,Shapley and Scarf (1974)が定式化した「基本モデル」で上記の問題を考察した.基本モデルは,(1) 同時手術数に制限なし,(2) ドナーに対する患者の選好は線形順序(生着率が高いドナーほど好ましく,生着率の高い順番にドナーを並べたときに同順位がない),(3) 各患者が持つドナーの数は一人だけ,という3つの特徴を持つ.この基本モデルで耐事前交換性,個人合理性,耐戦略性を満たす腎臓交換メカニズムは,トップ・トレーディング・サイクル・メカニズム(TTCメカニズム)だけであることがわかった.一方で,耐事前交換性,個人合理性,効率性を満たす腎臓交換メカニズムは,TTCメカニズム以外にも多数存在することも判明した.また,耐事前交換性を適切に強めた性質と個人合理性を満たす腎臓交換メカニズムは,存在しないことが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2013年度の達成目標であった「基本モデル」の分析はほぼ終えたため.
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は,腎臓交換メカニズムを初めて考案したRoth, Sonmez, and Unver (2004)のモデルにおいて,耐事前交換的な腎臓交換メカニズムの設計可能性を考察する.Rothらのモデルは基本モデルの構造に「間接的ドナー交換」を加えたもので,基本モデルの拡張になっている.間接ドナー交換とは,自分のドナーを他人に提供する代わりに,献腎移植の待機順位を上げてもらうというオプションのことである.Rothらは,この拡張モデルにおいて,TTCメカニズムに基づいた6つの腎臓交換メカニズムを提案している.そのため本研究では,2013年度に基本モデルで得られた結果を基盤にして,それら6つのメカニズムのうちで耐事前交換性を満たすものを明らかにすることから始めたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度に予定していたコンピュータおよびソフトの購入を見送ったため未使用金が発生した. 2014年6月18日~21日にボストン・カレッジで開催される国際学会The 12th Meeting of the Society for Social Choice and Welfareに参加・報告するための旅費として研究費を使用する.また,情報・資料収集のために学会や研究会に参加する際の旅費としても研究費を使用する.さらに,2013年度に購入を見送ったコンピュータおよびソフトの購入,論文をまとめ学術雑誌に投稿する際に必要となる英文校閲,関連図書の購入などにも研究費を使用する.
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