研究課題/領域番号 |
25380253
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
栗田 啓子 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (80170083)
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研究分担者 |
松野尾 裕 愛媛大学, 教育学部, 教授 (30239058)
生垣 琴絵 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 専門研究員 (90646093)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 経済思想史 / 日本 / 女性 / 経済学教育 / 女性経済学者 |
研究概要 |
平成25年度は、5回(7月20日(土)、8月30日(金)~9月1日(日)、9月20日(金)~22日(日)、11月22日(金)~24日(日)、2014年3月21日(金)~24日(月))の研究会においてメンバーの研究内容を検討し、ゲスト・スピーカーによる周辺領域の研究報告を聴講した。また、研究成果の一部については、出版のための論文原稿の作成を開始した。 研究の概要:1)女子経済学教育の特質に関して、3つの機能を確認することができた。第1は、教養教育の一環として、女性の自立を支える社会理解を提供する機能である。この第1の機能について、生垣琴絵(研究分担者)が大内兵衛の『婦人の経済学』を取り上げ、市民としての女性の育成における経済学の役割を指摘した。栗田啓子(研究代表者)は新渡戸稲造と安井てつを対象に、女性に対するリベラル・アーツ教育における社会認識のツールとしての経済学の意義を明らかにした。第2は、家庭生活を合理的に運営する能力を育成する機能である。生垣が継続している森本厚吉研究は、森本が消費経済学の確立を通じて、この第2の機能を目指したことを明らかにした。第3は、女性に高度職業人への道を開く機能である。栗田は東京女子大学卒業生の進路を検討することによって、この機能が同時に、女性の社会事業への関心を育んだことを見いだし、大正期の社会事業における女性の位置づけを今後の研究課題のひとつにすることにした。2)女性経済学者に関しては、松野尾裕(研究分担者)が、文献研究と併せて、竹中恵美子大阪市立大学名誉教授へのインタビューの分析を行い、竹中の労働理論と関西の女性労働運動とが相互に影響を及ぼしながら展開されたことを解明した。また、これまでの本研究課題が都市住民の視点を優先させてきたことに対して、農村住民の視点を強調した丸岡秀子の生活経済論の分析を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的に掲げた2つの目的(経済学教育が目指す新しい女性像と女性経済学者による経済学の「革新」)は、以下の1にまとめた個別の論点については、非常に順調に研究が進展したと言える。しかし、2にまとめた個別の論点については、研究が緒についたばかりの論点とともに、研究の方向性を再検討すべき論点も存在している。以上の理由によって、総体としては、当該研究は「おおむね順調に進展している」と評価できると考える。 1.非常に順調に進捗した個別研究:研究課題の第1の領域「女性に対する経済学教育」については、1)新渡戸稲造関連研究(栗田)および2)森本厚吉関連研究(生垣)は、当初の目標を達成し、論文作成もほぼ完了している。4)家庭経済学の可能性については、研究会において、上村協子家政学院大学教授に2回報告いただき、家政学部から見た経済学教育の歴史的背景と重要性について理解を深めることができた。第2の領域「女性経済学者」については、1)家庭経済学の領域について、松野尾が松平友子研究を完成させ、論文執筆を終了させている。また、生垣がアメリカのホーム・エコノミクスと日本の家庭経済学の比較研究を開始した。2)労働経済学については、竹中恵美子大阪市立大学名誉教授へのインタビューを実施し、その原稿も完成させた。また、研究会における伍賀偕子元大阪総評職員の報告によって、竹中理論の女性労働運動への影響についても考察を深めることができ、松野尾による竹中研究に結実した。 2.努力すべき個別研究:第1の領域については、3)職業教育との比較(栗田)および5)市民(消費者)教育(生垣・栗田)を今後重点的に研究する。第2の領域については、 3)インタビュー対象者が逝去されたことによって、開発経済学の取り扱いを再検討する必要が生じている。4)社会政策については、社会事業とも関連させて研究する(生垣・栗田・松野尾)。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度と同様に、26年度も、年4~5回の研究会を開催し、各人の個別研究を相互に検討するとともに、ゲスト・スピーカーを招き、周辺領域の研究に対する理解を深める。26年度は、第1の領域に比重を置きながら、「比較」に焦点を当てる予定である(以下1~3)。さらに、4で詳述するように、新たな論点を付け加えることによって、当該課題が持つ現代的意義を強化したいと考えている。また、第2の領域の論点の再検討も併せて行う。 1.女子職業教育と高等教育を比較し、それぞれにおける経済学教育の位置づけの違いを検討する(栗田)。市民に対する経済学教育として、大内兵衛の『婦人の経済学』の研究を進展させる(生垣)。さらに、女性・市民向け雑誌における経済(学)に関する記事を分析対象として、市民(消費者)教育としての経済学教育という論点の可能性を検討する(栗田・生垣)。 2.比較の視点としては、大正期における男性に対する経済学教育と女性に対する経済学教育の役割の異同を検討するために、ゲスト・スピーカーの報告を設定する。また、生垣はアメリカのホーム・エコノミクスと日本の家庭経済学あるいは消費経済学との比較研究を継続する。 3.経済学および経済学教育における、都市住民の視点と農村女性の視点を比較考量する題材として、丸岡秀子を取り上げ、彼女の経済思想を分析する(松野尾)。 4.これまでの研究を通じて、第1の研究目的である経済学教育が目指した新しい女性像を明らかにするためには、経済学教育を受けた女性の社会的活動の分析が不可欠であることが判明した。そこで、第2の領域の社会政策における女性経済学者の検討に加えて、経済学教育を受けた女性たちの社会事業の実践活動を新たな検討課題とすることにした(栗田・生垣・松野尾)。また、女性の就労に関する言説と経済学教育の意味づけとの関連も考察することにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究遂行に支障は来さなかったものの、当該年度の未使用額が比較的大きなものになった理由は、つぎの3点である。第1に、物品費として計上していた書籍・資料の収集が遅れたこと(栗田研究代表者・生垣研究分担者)、第2に、研究会開催のために計上していた旅費について、東京開催が多かったことにより、栗田研究代表者の旅費使用額が抑えられたこと、第3に、研究会におけるゲスト・スピーカーに対する謝金を計上していたのに対し、今年度は謝礼を辞退されるゲスト・スピーカーが多かったことによる。 平成26年度においては、25年度の助成金使用実績(とくに旅費使用額)を考慮して、研究分担者への配分額に関する当初の計画を見直し、助成金のさらなる有効活用を図ることを基本的方針とした。その結果、2名の研究分担者への配分額を増額することとした。 個別の費目については、書籍・資料の収集が遅れている栗田研究代表者・生垣研究分担者は収集を加速化させ、物品費を目標通りに使用することとする。人件費・謝金については、研究会におけるゲスト・スピーカーに対し、報告内容に見合った適切な額の謝金を提供する。
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