研究課題/領域番号 |
25380253
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
栗田 啓子 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (80170083)
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研究分担者 |
松野尾 裕 愛媛大学, 教育学部, 教授 (30239058)
生垣 琴絵 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 専門研究員 (90646093)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 経済思想史 / 日本 / 女性 / 経済学教育 / 女性経済学者 / 市民教育 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、4回(5月24日(土)、10月10日(金)~12日(日)、10月18日(土)、11月8日(土)~9日(日))の研究会においてメンバーの研究内容を検討し、ゲスト・スピーカーによる周辺領域の研究報告を聴講した。また、出版を目的として、研究成果について論文原稿の作成を開始し、研究代表者と分担者の間でメールによって内容を検討しながら、その一部については原稿を完成させた。 研究の概要:本研究課題の第1の領域(女子経済学教育)に関して、平成25年度には女子経済学教育の3つの機能(女性の自立を支える社会理解の提供、家庭生活を合理的に運営する能力の育成、高度職業人の養成)を明らかにしたが、それを受けて、本年度は、その影響と市民教育への展開を検討した。獲得した成果としては、1)栗田啓子(研究代表者)が東京女子大学実務科卒業生の進路を分析することによって、女子経済学教育が実際に高度職業人(企業、官庁、社会事業)を生み出したことを明らかにした。2)松野尾裕(研究分担者)は、東京女子大学などの事例を分析し、女子経済学教育が学生の社会運動への参加を促した可能性を指摘した。3)生垣琴絵(研究分担者)は、市民教育の一例として、森本厚吉の通信教育「文化生活」を検討し、新しい社会認識の育成と家庭生活の合理化が深く関連していることを解明した。この通信教育を森本が大学普及事業と位置づけていること、新渡戸稲造も民衆大学事業を展開していることを考え併せ、市民に対する高等教育と女子経済学教育の必要性の認識が共有する思想的基盤の探求を次年度の研究目的のひとつとした。 第2の研究領域である女性経済学者に関しては、松野尾裕が、日本初の女性経済学者である松平友子の最後の学生であった亀高京子家政学院大学名誉教授へのインタビューの分析を行い、松平の人と形と教育実践を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的に掲げた2つの目的(経済学教育が目指す新しい女性像と女性経済学者による経済学の「革新」)については、以下の1の個別の論点の研究は、論文執筆もほぼ完成し、非常に順調に進展したと評価できる。とはいえ、以下の2の個別論点については、課題が残されている部分があるので、全体としては、「おおむね順調に推移している」と評価した。 1.非常に順調に進捗した個別研究:研究課題の第1の領域「女性に対する経済学教育」では、1)新渡戸稲造関連研究(栗田啓子)において、新渡戸学長の下で学監を務めた安井てつまで拡大し、東京女子大学における経済学教育の多様な意義を明確化し、実務科卒業生の進路の分析を通じて、その教育効果を明らかにした。2)森本厚吉関連研究(稲垣琴絵)では、森本の市民教育にまで研究範囲を拡大し、女子経済学教育の実践的な特徴を浮き彫りにした。第2の領域「女性経済学者」については、1)家庭経済学と女性関連研究では、松野尾裕が松平友子の教育実践にまで研究を拡大している。2)労働経済学関連研究では、前年度の竹中恵美子の労働経済学の女性労働運動への影響の研究を進展させ、一方向の影響に止まらず、運動から理論への影響も見られることを明らかにした。 2.やや遅れている個別研究:第1の領域においては、新渡戸と森本の市民教育の展開と女子経済学教育との関連。女子経済学教育の成果および良妻賢母像の変容。第2の領域においては、社会政策関連研究。開発経済学に関する研究については、平成26年度の実施状況報告書で報告したように、インタビューを予定していた研究者の逝去を受けて、代替案を模索してきたが、見いだすことができず、この論点を断念することを決定した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでと同様に、平成27年度も、年4回程度の研究会を軸に、各人の個別研究を検討するとともに、ゲスト・スピーカーを招き、周辺領域の理解を深める予定である。申請書でも、最終年度を「総括」の年と位置づけたように、最終年度中に研究成果を公刊することを目標としている。そのために、助成金の一部を出版助成に充てることを計画している(これについては、学術振興会にすでに申し出をしている)。 前年度までに残された課題については、第1の領域においては、新渡戸と森本の市民教育の展開と女子経済学教育との関連を追究するとともに、女子経済学教育が実際に新しい女性を育成し得たのかを研究する。また、職業教育との比較研究によって、良妻賢母像の変容も明らかにする予定である。第2の領域においては、1)と2)の個別課題の研究はほぼ終了したので、4)の社会政策関連研究を、社会事業とも関連させながら、重点的に展開する予定である。 具体的な個別論点と担当者は以下の通りである。1)女子職業教育と高等教育における経済学教育の位置づけの異同(栗田啓子)。2)新渡戸の民衆大学、森本の通信教育、女性向け雑誌、大内兵衛『婦人の経済学』など、市民教育における女子経済学教育(栗田啓子、生垣琴絵)。3)農村女性の視点を有する丸岡秀子の経済学と社会運動の関連(松野尾裕)。4)経済学教育を受けた女性の進路、とくに社会事業の分野における女性(栗田啓子、生垣琴絵、松野尾裕)。
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次年度使用額が生じた理由 |
「今後の研究の推進方策 等」で記したように、研究が順調に進捗し、出版を具体的に計画できるようになったので、助成金の一部を出版助成に充てるために、研究遂行に支障が出ない範囲で、計画的に平成26度の支出を抑えた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、研究費の使用の第1の用途を、各人の個別研究を総合し、研究課題を全体として「総括」するための研究会の開催とする。第2の用途は、出版助成とする。
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