研究課題/領域番号 |
25380253
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
栗田 啓子 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (80170083)
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研究分担者 |
松野尾 裕 愛媛大学, 教育学部, 教授 (30239058)
生垣 琴絵 小樽商科大学, 教育開発センター, 学術研究員 (90646093)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 経済思想史 / 日本 / 女性 / 経済学教育 / 女性経済学者 / 家庭経済学 |
研究実績の概要 |
第1の論点「女性に対する経済(学)教育」については、東京女子大学と女子経済専門学校の経済学教育の内容と歴史的意義を明らかにした。1)女性の新しい生き方が追求された1910~20年代に発表された山川菊栄の論説に基づき、日本のこの時代に、女性が経済学と出会う必然性が醸成されていたことを提示した。これを受け、2)東京女子大学創立時に設置された実務科を中心に、女子に対するリベラル・アーツ教育と経済学教育とが、自律した女性の育成を通じて、日本社会の実質的な近代化を目指していたことを明らかにした。3)東京女子大学初代学長の新渡戸稲造と同様の問題意識を持ちながら、それとは対照的に、森本厚吉が、女性たちに「道具としての経済学の知識」を教授し、家庭生活の改善から社会の改善に向かったことを明らかにした。 第2の論点「女性の経済学者」については、松平友子を起点とする家庭経済学の系譜を明らかにした。1)松平友子が日本初の女性経済学者であることを発掘し、その「家事経済学」が家庭・家族における主要な関心事である家事労働や消費生活に関する社会科学的研究を開始させ、それらが現代に通じる問題意識を持ったものであることを示した。2)松平の家事経済学を継承した伊藤秋子と御船美智子の家庭経済学を検討し、従来、家政学部の特殊な経済学と見なされ、既存の経済学と分断されてきた家庭経済学を、初めて経済学史に正当に位置づけることを可能にした。また、現代の女性経済学者の代表例として、竹中恵美子を取り上げ、竹中が舞台とした労働経済学・労働市場論が、女性にも許された数少ない経済学の領域であったことに留意しながら、竹中の理論構築と女性労働運動の現場に及ぼした影響を分析し、理論と実践の相互作用を浮き彫りにした。 資料的整理として、上記の竹中と開発経済学の村松安子の「対談」と、松平友子晩年期の教え子亀高京子の「聞き書き」をまとめた。
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