本研究は、イギリスで1870年から1890年にかけ、不均衡論的分の析視点が均衡論に先行することを明らかにしようとする。研究成果を総括すると、1.不均衡分析と均衡分析の分水嶺が、1870から80年代にかけてのジェヴォンズ、エッジワース、前期マーシャルと1890年以降の後期マーシャルにある。2. 不均衡論の視点は、収穫逓増の生産構造を背景に、包絡線構造及びパラメトリック経済などの現代の分析ツールの起源と密接に関連していた。 3. 2の分析ツールに付随して、ゲーム理論的視点や制度設計の視点が萌芽的に展開され始めていた。以上により現代のミクロ経済学の形成過程の経済学史的理解が大幅に修正される。
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