研究課題/領域番号 |
25380257
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
若田部 昌澄 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (00240440)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 経済危機 / 1990年代 / 経済政策 / 経済思想 / 日本 |
研究実績の概要 |
本年度は研究2年目であり、基礎的な研究の推進と研究成果の執筆に努めた。 第一に、1990年代の日本の経済政策と経済政策思想について、現実の経済の動向と政策論争の動向を展望する英文での専門向け単行本を執筆した。これはJapan’s Great Stagnation and Abenomics (New York: Palgrave Macmillan)として、2015年4月に刊行された。この中では、経済政策思想を重視する観点から、日本の経済政策思想、とりわけマクロ経済政策思想の混乱が政策の失敗を生んだという仮説のもと、論争を整理している。また、同様の混乱の例として、1930年代の日本の昭和恐慌時の経済政策論争とも対比している。 第二に、日本の経済政策思想として強力だったものとして構造改革がある。それについては"Structural Reform in Japan: An Intellectual History"として、2014年5月の経済学史学会で報告した。これは上記著作に収録されている。 第三に、1990年代を理解することは、現代日本の経済政策を理解するのにも有用である。いわゆるアベノミクスの意味は、1990年代から現代に至る、これまでの経済政策とその思想と照らし合わせてより良く理解できる。その一部は、上記英文著作でも分析した。それに加えて、昨年度に引き続き、研究成果の社会還元の一環として、一般向けの新書で現代日本の経済政策を解説した(『ネオアベノミクスの論点』)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、専門向けの英文著書の刊行に向けた作業が完了した(本は2015年4月23日に刊行された)。また学術論文を刊行することができた。さらに昨年に引き続き、一般向けの啓蒙書を刊行することができた。また、千倉書房から刊行予定だった論文は本の出版企画が消滅したために立ち消えになったが、その成果は上記および今後の刊行物に反映されることになる。さらに研究成果については、2014年5月の経済学史学会で学会発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、研究成果の発表について内外の学会での発表を予定している。 第一に、1990年代からの経済政策論争については、まだ民間エコノミストや経済評論家の言論の検討が残されている。これについては2015年5月14日から16日に開催されるヨーロッパ経済思想史学会(European Society for the History of Economic Thought)にて、"Economic Controversy in Popular Discourse:The Case of Japan’s Great Stagnation"と題する報告を行う。 第二に、1990年代の経済政策論争を日本におけるケインズ主義の変遷の中で位置づける。これについては2015年5月30日から31日開催される経済学史学会にて、"Keynesianism in Japan"と題する報告を行う。 第三に、1990年代の経済政策論争をさらに広い文脈で位置づける研究を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入計画で予定していた計画額より安価に入手することができた。
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次年度使用額の使用計画 |
金額は少額であり、次年度は計画通りに支出できる。
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