研究課題/領域番号 |
25380261
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
長谷川 光 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (30189534)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ベイズ統計学 / 順序選択モデル / MCMC / 個人の異質性 / Anchoring vignettes |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,個人の異質性を考慮した順序選択モデルのベイズ法による推定方法の開発とその社会科学のデータへの応用である.具体的には,King et al. (2004)が開発したAnchoring Vignettesをもつ順序モデルのベイズ推定を考える.申請者の知る限り,このようなAnchoring Vignettesをもつ順序選択モデルのベイズ推定を試みた文献はなく,本研究の重要性を表す点と言える. 本年度では,交付申請書に記載した「平成26年度の研究実施計画」に従って,以下の点を行った. (a) 平成25年度に引き続き,標本理論に基づく既存の文献を検討し,推定に関わる問題点の整理を行い,Anchoring Vignettesをもつ順序モデルのベイズ推定の開発の基本的枠組みを考えた. (b) self-assessment式とvignettes式との相関を考慮したモデルを考え,そのベイズ法による推定方法の開発を行った.self-assessment式とvignettes式との相関を考慮したモデルは既存の文献にはない.また,標本理論に基づく方法によるこのモデルの推定は困難と思われるので,ベイズ法を用いる利点となる.ベイズ法による推定でも,MCMCのミキシングが遅く,よい推定値を得るのが困難であったが,Greene and Hensher (2010)のパラメータ変換を用いることで問題を解決することができた.現在,論文作成中であり,論文完成後,海外の専門誌へ投稿する予定である. (c) 本研究に関連して,多変量順序選択モデルを用いて,仕事の満足度に関する実証分析を行い,2本の論文を作成した.どちらのの論文も専門誌に投稿中であり,そのうちの1本は,現在,査読者のコメントを基に第3回の改訂を行っている.もう1本はについては,査読結果を待っているところである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」にも書いた通り,交付申請書に記載した「平成26年度の研究実施計画」に沿って研究を推進しており,研究は順調に進展した.
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書に記載した「平成27年度の研究実施計画」に沿って今後の研究を進めていく.具体的は,下記の点を行う予定である. (a) 文献・データの収集と整理:国内外で新たなデータの収集を行うとともに,収集したデータを本研究の分析に適合するように整理する.また,文献の収集も継続する. (b) Anchoring Vignettesをもつ順序モデルの拡張とベイズ推定:平成27年度では,複数のself-assessment式とvignettes式のモデルを考え,そのベイズ法による推定方法を開発する.前年度,前々年度に引き続き,本研究で開発した手法を具体的な社会科学のデータを用いた分析に適用する.平成27年度は最終年度にあたるので,平成25年度及び平成26年度に構築したベイズモデルの実証分析への応用に際しての問題点を検討し,その修正を行う.また,多変量順序モデルの動学化も試みる. (c) 手法の実証分析への応用:計量経済学の手法は,実際の経済データに使用されてこそ,その有用性が明らかになると考えるため,構築したベイズモデルを用いた実証分析をさらに進めていく. (d) 研究成果の発信:得られた研究成果は学会・セミナーで発表するとともに,幾つかの論文にまとめ,海外の専門誌に投稿する.
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次年度使用額が生じた理由 |
カラープリンタ-複合機のトナーカートリッジを複数色について購入予定であったが,トナーの残量があったため,翌年に購入することにした.
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度の繰り越し額で,上記のトナーカートリッジを購入する予定である.
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