研究課題/領域番号 |
25380262
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高木 真吾 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (10326283)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 構造推定 / 入札 / 部分識別 |
研究概要 |
通時的な環境を考慮した入札意思決定の定量的研究という本研究の目的達成のため,今年度の重要な課題は,応札する入札主体が,その案件における供給開始時点でどの程度の供給余力を持っているかを把握することである.本研究で利用しているデータセットには落札者を特定できる情報と落札結果が明示されていることから,過去の落札結果を集計することができる.これらを開始時点と供給期間の情報と併せることによって,どの時点でどの程度の平均的な供給を行っているか(以下,予定供給量)が各入札参加者ごとに把握できる.このデータセットのプロトタイプの作成を実施し,単純な回帰式による相関関係という観点からは,特定規模電気事業者(新電力,PPS)の応札行動と予定供給量に相関関係がみられることが確認された.つまり各応札者は予定供給量が応札行動の決定要因の一つである可能性を示唆している. また入札者の非対称性に焦点を当てた構造推定論文の改訂作業を推進した. 他にも,政策評価に用いるスイッチング回帰モデルの分離に関する情報が欠損しているとき,モーメント不等式の枠組みで,処置効果がどのような値を取りうるか(部分的に識別される範囲)についての理論的な枠組みと推定手順についての研究を進行させた.スイッチング回帰モデルでは,実際にデータを適用する場合特に説明変数を多数含むためモデルのパラメータがかなり高次元となる.多くの理論的な論文で示されている部分識別されるパラメータ区間を求める方法ではほとんど実行不可能であるが,ギブスサンプリングによってモーメント不等式を満たすグリッド点の候補を選別し,近年進展のある多重検定の方法を適用することで漸近的に妥当であり,かつ実行可能な推測方法を提案することが可能である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
入札における通時的意思決定を考える上では,応札時点で入札参加者が持っている情報を明らかにする必要がある.従来の研究では入札参加者が持っているはずの,(すでに過去の入札案件において落札した結果)将来にわたりどの程度供給する予定を持っていて,直面している案件で落札したらならば,その供給予定量がどのように変化するのかという情報がうまく利用されていなかった.入札参加者が持っているすべての供給予定量を知ることができないが,今年度作成したデータで一定の応札行動との関係を見ることができる情報が入手できた.このデータは非常に複雑な手順で集計しているため,比較的長時間の作業を必要としたが,次年度以降より多くのデータセットに適用可能な方法論を確立させることができたことから研究課題達成のための重要な進展と考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,プロトタイプとして作成した供給予定量のデータを全ての年度において完成させ,動学的意思決定の下での構造モデルへの適用を開始する.データの作成は大学院生の研究補助を受けつつ,秋までに完成させ,データの特性を把握する.同時に,既存研究で用いられている入札データから(観測不可能な)供給費用へ射影する方法論を,すべての入札データが入手可能なケースのみならず,本研究のデータのように落札価格しかわからないケースへ拡張する枠組みに関する考察を行う. 同時に,分離情報に欠落があるスイッチング回帰モデルの部分識別に関するシミュレーションと入札データへの適用を行う.
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