研究概要 |
平成25年度 (初年度) には, 日本国内の原子力発電所における請負労働者の労働環境に関する, 理論分析および実証分析を論文にまとめ, 査読付きの論文雑誌に投稿した. 論文は, 原子力発電所内で構内請負の事業者が請け負った仕事をさらに請負事業として発注する階層構造がもたらす結果を考察したものである. 請負事業者の利用は, 理論的にはプリンシパル・エージェントの問題としてとらえることができる. そこでは, エージェントである請負側の行動をプリンシパルである発注者, つまり電力会社が完全に把握できないことから, エージェントに望ましい行動をさせられない問題が生じる. 通常はエージェントをプリンシパルが望む方向へ動機付けるために情報レントと呼ばれるプレミアムを支払うが, 原子力事業においては関連法規の規定により, 電力会社がそのようにする動機を持ちにくい可能性が示唆される. 実証分析では, 国内の原子力発電所のデータを用いて, 電力会社が請負労働者を使用する動機に関する仮説検定を行い, このことを裏付けるような結果が得られた. 特に, 階層的請負が労務管理上だけでなく原子力災害のリスク管理上も大きな問題を持つことを指摘したことは, 現在の電力供給の根幹に関わることから社会的に重要なものであると考えられる. また, 9月に日本大学において開催された第16回労働経済学コンファレンスで口頭報告を行った. 討論者その他の参加者から有益なコメントを数多くいただき, これらを論文にフィードバックする作業を現在進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
学内ではあるが, 居室の引っ越しがあり, 大幅に居住面積と収納が減ったため. また, そのためにPCの置き場所を確保できるまで購入を延ばし, 借り受けていたデータが利用規約により他のPCで使えなかったため.
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