研究実績の概要 |
平成26年度 (2年目) には, 初年度に執筆した原子力発電所内の請負労働者の労働環境に関する理論・実証分析の論文を, セミナー等で得られたコメントを参考に修正し, 査読付きの海外論文雑誌に投稿した. 当該論文は掲載され, 出版された. 論文では, 原子力事業関連法規の制約下にある電力会社が原子力発電所内で請負事業者を利用することにより発生する階層構造を, プリンシパル・エージェントの理論を考慮した利潤最大化問題としてモデル化し, 導かれる2つの相反する仮説をデータにより実証分析したものである. その結果, 原子力発電所における請負利用の動機として, 特殊な技能・装備を用いて複数の仕事をするという規模の経済における優位性ではなく, プリンシパルである電力会社とエージェントである請負事業者の間の情報の非対称性を利用して労働安全衛生の教育訓練等のコスト増大を回避することが強く作用していることを支持する結果が得られた. これまでの請負労働者に関する研究で, いわゆる非正規雇用や高齢者の契約社員としての継続雇用, 育休・産休を含むキャリア設計等の雇用形態・働き方の複雑さを考慮した労働市分析の重要性が明らかになった. そのため, これ以降は, 多様な雇用形態がある労働市場における労働供給行動について, 家計を主体とした考察を行う. 以前より就業構造基本調査匿名データ (独立行政法人統計センター提供) の提供を受けていたが, 所属部署の引越しにともない利用できなくなっていた (引越し先の環境が利用規約を満たさなかったため). 昨年, このデータを利用可能な環境をととのえて再度利用申請し, 平成27年4月から利用可能になった. 現在はこのデータの分析を進めている.
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