研究実績の概要 |
初年度から2年目にかけては, 原子力発電所内の多重請負構造の問題について, 労使間での情報の非対称性に注目した実証分析を行い, 査読付きの海外論文雑誌に論文として報告した. 平成27年度 (3年目) にはその延長として, いわゆる非正規雇用に見られる雇用・就業形態の多様性に注目した, 家計・労働者側の労働供給行動における意思決定を考察した. 平成27年4月に独立行政法人統計センターから「就業構造基本調査」の匿名化再集計データを提供していただき, ミクロ実証分析の手法を適用した事実発見を目標として活動してきた. 提供されたデータは3期分 (調査は5年ごと) だがパネルデータではなく, difference-in-differnce 等の因果効果測定の手法は適用が難しいと考え, 比較的頑健な相関関係を発見して仮説を立てる方針を取った. ただし, 調査標本には過去に関する質問項目もあり, 単純なクロスセクションデータの相関よりも得られる情報は多い. これまでに年齢, 性別, 世帯構成, 本人の年収, 世帯の収入, 未成年者の (年齢ごとの) 数といった属性のうち複数を軸として疑似ヒートマップの作成等, データの可視化を行い, 特に世帯分類については同居する世代数が重要な属性であることが見出された. 現在はこれらの定性的な事実をワーキングペーパーにまとめつつ, 標本のグループ化による仮説設定を試みている.
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