研究実績の概要 |
初年度から3年目にかけて, 原子力発電所における構内請負の多重構造の問題について, 電力会社と請負会社の間の情報非対称性に注目した理論・実証分析を行い, 査読付きの海外学術誌に論文として投稿し採択された. 平成28年度には, その延長として家計を単位とする労働供給行動の分析を試みた. 80年代から増加し続けている非正規雇用や高齢者の継続雇用を促進する政策等により多様性を増した雇用・就業形態を決定する要因として, 労働力の需要側だけでなく供給側の特性は非常に重要である. 分析には, 一橋大学を通して提供を受けた「就業構造基本調査」の匿名化再集計データを用いた. 同データは過去に関する質問項目もあち, 単純なクロスセクションデータよりも得られる情報は多い. 家計の行動は世帯人員の構成によって大きく異なると予測されることから, 既存の世帯類型だけでなく様々な分類を作成して比較的頑健な相関関係を発見して仮説を立てる方針を取った. 具体的には, 年齢, 性別, 本人・世帯の収入といった属性をもとに世帯を分類し, データの可視化を行った. 分類に使える項目が非常に多く, 様々な組み合わせを試して得られる印象を確認するような可視化は非常に手間がかかるため, 最終年度においてまだ論文として報告する大きな発見はないが, 申請期間終了後も同様に, データから見出された定性的事実をもとに研究を進めていく予定である.
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