研究概要 |
研究計画書に記載した三つの研究目的別に記載する。ア)正規分布以外の多変量分布において幾何学的な諸量の具体的な値を求める:ダイバージャンスを用いた分布間の距離を計測することで、よりシンプルな漸近展開を考えた。この観点から、一般の多変量分布において条件付き分布の収束を扱った。具体的には、条件をつける側の分布が一点に集中していくときの漸近的な挙動をダイバージャンスの漸近展開で考察し、幾何学的な諸量を用いてこれを表現した。イ)指数分布以外の分布において幾何学的な諸量と推測がどう結びつくかを探る:t分布の作る族の正規分布の近傍での幾何学的な考察を行い、リーマン計量や接続・曲率等の具体的な計算結果が得られた。これらを使って統計的推測問題との関連を考察する予定である。ウ)ある分布族全体の内在的な曲率が統計的推測にとってどのような意味を持つかを探求する:この目的に関しては今のところ何ら成果は得られていない。 三つの研究目的に共通する事柄として、微分幾何学の知識を深めることが今年度の計画の重要な部分であったが、以下の本の一部を精読した。 1."The geometry of submanifolds" (Yu. Aminov, CRC press, 2001):確率分布族はそれを含むより大きな確率分布族の部分多様体として規定されることが多いが、部分多様体の外在的な幾何学的諸量を理解することが重要な課題となる。そのための基本事項を学んだ。 2."リーマン幾何学"( 加須栄篤, 培風館, 2001):この本は曲率に関して詳しく書かれており、特に部分多様体に関しての記述はこれからの研究の基礎になると思われる。
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