研究課題/領域番号 |
25380267
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
羽森 茂之 神戸大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (60189628)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | realized GARCH / dependence structures / Archimedean copulas / GEM / IPO / contagion |
研究実績の概要 |
平成27年度は、本研究プロジェクトの3年目に当たり、過去2年間の研究成果をベースに、このプロジェクトに関してさらに研究を深化させ、論文の執筆に取り組んだ。その結果、3年目の研究成果として、3本の論文を海外の査読付き学術専門誌から出版することができた。それらの研究成果から得られた新たな知見は、以下の通りである。 ・ARMA-Realized GARCH (ARMA-RGARCH) モデルを用いて、ティックデータを用いて計算したユーロ円市場の短期金利の日中のボラティリティ・クラスタリング (volatility clustering) と平均回帰効果(mean preserving effect)の分析を行った。その結果、ARMA-RGARCHモデルは、単純なRGARCHモデルよりもデータへの当てはまりは向上するが、ボラティリティの予測力に関しては必ずしも向上しないことが明らかとなった。 ・先進市場(developed markets)、新興市場(emerging markets)、フロンティアー市場(frontier markets)を含む国際的な株式市場の相互依存関係を、hierarchical Archimedean copula モデルを用いて分析を行った。その結果、新興市場と欧州市場との間には強い依存関係があるが、フロンティア市場は他の市場との依存会計が最も弱いことが明らかとなった。さらに、世界金融危機と欧州債務危機の双方の時期に、伝搬効果(contagion effect)も見出された。 ・取引量と株価収益率に関する動学的共通相関(dynamic equicorrelation)モデルを用いた分析に基づき、中国の新興企業向け市場(GEM:Growth Enterprise Market)の新規上場株式(IPO: Initial Public Offering)効果について分析を行った。その結果、IPO効果は約2年で終わることが明らかとなった。さらに、取引量と収益率との間には、正の相関関係があることも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2015年度には、3本の論文が、海外の査読付き学術専門誌である Journal of Banking & Finance, Economic Modelling, Journal of Reviews on Global Economics から出版された。これで、研究プロジェクトを開始してから、合計、12本の論文が海外の査読付き学術専門誌に採択されたことになり、当初の予定以上に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度以降においては、平成25年度、平成26年度、平成27年度に行った研究蓄積をもとに、さらに、研究を深化させ、海外への積極的な情報発信を目指して研究成果を英文論文としてまとめたのち、海外の査読付き学術専門誌に投稿することを予定している。その際に、単に新しい統計分析の応用という段階にとどまらず、できるだけ得られた結果が実体経済に対して持つ政策的含意に関して十分に注意を払うようにしたいと考えている。
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