経済変数間の長期均衡関係を分析する共和分分析は、貿易や取引費用の存在のため、非線形調整を考慮したモデルが提案されてきている。一方で、共和分分析によって検証される経済変数は、GARCHタイプや確率的ボラティリティなどの不均一分散を持つことが多い。近年の非線形調整を考慮した共和分分析は、その重要性が指摘されているものの、不均一分散の考慮を十分に行っていない。先行研究では近年の非線形性を考慮した共和分検定は、誤差項がGARCHタイプに従っていたり分散の構造変化がると、検定に深刻な歪みを生じさせることを明らかにしている。そのため、適切な検証が困難となる。 これらの問題点をもとに、本年度はWild bootstrapを使用した円滑遷移自己回帰モデルに基づく共和分検定を提案し、その有効性を検証するとともに、応用分析を行った。通常の漸近的手法は、説明変数の数や定数項、トレンドの存在、サンプルサイズに依存する。一方で、提案された検定はそれらに依存することなく、さらに不均一分散の影響を受けることなく検定を行うことが可能となる。実際にシミュレーション分析をしたところ、通常の漸近的な検定ではサイズの歪みが大きかったが、提案された検定は、不均一分散の形に関わらず、サイズの歪みを持たなく、十分な検出力があると明らかになった。実際のデータで応用分析を行ってもこの性質は確かめられ、本研究で提案された検定は有効であることが示された。
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