公益法人については、我が国経済社会におけるその活動実態を他の経済主体との対比において明らかにする統計がないため、本研究では業務記録と基幹統計調査を完全照合して集計することにより新たな統計を作成・分析した。利用した業務記録は平成16年公益法人概況調査、平成23年特例民法法人概況調査、基幹統計調査は平成16年事業所・企業統計調査、平成24年経済センサス活動調査である。電話番号を用いてPC上で照合を行い、非照合のものは、目視照合を行った。加えて、平成24年経済センサス活動調査から社会福祉法人、学校法人及び社会医療法人を抽出・集計し公益法人との比較分析を行った。 分析結果から、公益法人制度改革の影響として挙げられるのは、法人の二極化が進んだこと、とりわけ大規模法人に従業者数及び年間収入合計が集中するようになったこと、従業者数は法人数の減少にもかかわらず増加し、女性とパート・アルバイトなどの非正規労働者が増加したこと、事業活動においては、収益事業や受託事業に重点が置かれるようになったこと、事業収入に占める国からの補助金等収入の割合は縮小したが、都道府県からの補助金等収入の割合は拡大したこと、資産額、負債額がともに半減し、新制度下の法人への移行に備えた資産・負債の整理の動きがみられること、新制度の法人への移行は従業者数、年間収入合計が大きい大規模法人からなされたこと、補助金や委託費は支給対象の法人数を絞った集中化がみられること、「教育、学習支援業」と「医療、福祉」への移行の傾向がみられることである。 また、法人類型別の活動実態については、特例民法法人と新公益法人は産業大分類のほとんどの産業分野で活動しているが、学校法人、社会福祉法人、社会医療法人は特定の産業分野のみで活動していること、従業者数、収入金額等の活動量は、社会医療法人、新公益法人が大きいことなどが明らかになった。
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