本研究は、ふだんずっと一人でいるか家族とのみ交流を持つ無業者(20~59歳、学卒、未婚)として定義される「孤立無業(Solitary Non-Employed Persons: SNEP)」を実証分析した。そこでは他者との交流を一切持たない「社会的孤立」の無業状況に着目し、働きざかりの年齢であるにもかかわらず無業状態にある未婚者が急増している背景とその影響を明らかにすることを目的とした。 総務省統計局「社会生活基本調査」の特別集計および独自に実施したアンケート調査の分析を通じて、(1)孤立無業者が2000年代を通じて急増していること、(2)性別、年齢、学歴などを問わず、無業者が孤立化する傾向が強まっていること、(3)孤立無業者はそうでない無業者に比べて求職活動を行わず、ニート(若年無業)になりやすい傾向があること、(4)孤立無業者はインターネットの活用にそれほど積極的とはいえないことなどが発見された。 これらの研究成果は、社会的孤立および社会的排除とよばれる現象を、客観的・数量的な事実として、はじめて具体的に描き出したものである。2000年代以降注目されるようになった「社会的ひきこもり」に関しても、孤立無業の検討を通じて政策的な検討を行うことが可能となった。2010年代になってからは、若年のひきこもりに加え、中高年のひきこもりにも社会的関心が集まっており、ここでの研究成果は、メディアなどでもしばしば引用された。 研究結果は書籍や学術論文を通じて刊行された他、最終年度に英語での学術著作の刊行が決定した。
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