本研究は、オーストラリアの乾燥地域開発の経験が、1970 年代から1980 年代にかけて、乾季の乾燥と雨季の洪水に悩まされてきたタイ東北部、特に「トゥングラーハーイ」地域(ローイエット県、マハーサラカーム県、スリン県、シーサケート県、ヤソートン県に跨るムーン河地域)の農村開発に与えた影響を検証することを主な目的としている。 平成28年度は、オーストラリア国立公文書館(The National Archives of Australia :Canberra)での資料調査とタイ国内の研究機関、特に、チュラーロンコーン大学等の大学およびタイ農業・協同組合省土地開発局での資料調査をおこなう予定であった。ところが、オーストラリア国立公文書館は、平成28年半ばから、資料所蔵・保管システムの変更のため、長期の閉鎖状態となった。同公文書館の再開は平成29年7月以降とされている。平成28年度における同公文書館における資料調査は、事実上困難となった。そのため、タイ国内研究機関において、オーストラリアのタイ農業援助、特に、本研究の主たる対象とするタイ東北部「トゥングラーハーイ」地域におけるオーストラリアの農業援助に関する資料調査と分析に集中することになった。中でも、これまで本格的に資料調査が行われていなかったタイ国立チュラーロンコーン大学本部図書館の貴重文献(Rare Books)セクションおよびタイ情報センター(Thailand Information Center)に所蔵されている、オーストラリアのタイ農業に関わる援助関係資料について集中的に資料調査し、その収集と分析を試みた。特に、1970年代後半から1980年代初頭のタイ東北部「トゥングラーハーイ」地域におけるオーストラリアの農業援助プロジェクトに関する貴重な報告書を複数入手することができた。
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