研究課題/領域番号 |
25380282
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
根本 敏則 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (90156167)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 対距離課金 / 財源調達 / 交通需要管理 / 損傷者負担 |
研究概要 |
受益・費用・負担に関する概念の整理を行った。具体的には、(1)受益・費用・負担の意味づけ、(2)費用・負担の一致と乖離に関する課題整理、(3)受益・費用・負担の一致と短期最適化、長期最適化に関する課題整理の3点について、検討を行った。(1)においては、「受益者負担」を明確に定義付けし、道路利用者に限定して問題をとらえることとした。また、関係する費用、負担の内、金銭の移動がない物は抽象的な概念であり多様な定義付けが考えられるため、それらの意味や測定に用いる指標について検討した。(2)では、様々な時間と空間に分布している負担、費用について、空間的一致や時間的一致などの観点から、それらを構成する要素(時間や空間、車種など)を踏まえつつ、その一致と乖離の意味づけを行った。(3)においては、受益と負担、費用の一致と、短期的な最適水準、長期的な最適水準について、需要の変化を踏まえつつ、今後必要な理論の構築を行った。受益・費用・負担を一致させることと、社会的な最適化を実現することとは必ずしも同義であるとは限らず、課金等の調整によって最適化を図る必要がある場合があるが、それによって生じる政策的な課題を検討した。 加えて、道路整備財源を再構築するにあたっての理論的背景およびその具体的な施策の導出を行うため、課税、課金、整備財源調達の理論サーベイも実施した。費用の種類を整理し、道路の費用構造と負担構造を明確化したうえで、これらの費用構造と負担構造を結びつける理論としての原則論、価格形成に関する施策論(短期的施策としての限界費用価格形成論、長期的施策としての平均費用価格形成論)を中心にサーベイを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
受益・費用・負担に関する既存研究のサーベイを行い、本研究におけるそれぞれの定義付け、理論的枠組みの構築ができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度においては道路の費用構造に関する検討を行う。その際に、道路施設・整備別の耐用年数を仮定し、現道路資産を過去の道路整備費で説明する方法を検討する。たとえば、維持管理費は、国及び地方自治体の協力を得て道路種別ごとにケーススタディ地点を選び、道路資産が増加する支出と狭義の維持管理のための支出に峻別する方法を検討する。また、混雑費用に関しては、高速道路、一般道路の多くの観測地点において実測され利用可能となっているQ-V式の活用を図る。交通事故費用、環境費用については、欧州委員会資料、費用便益マニュアルなどを活用する。 加えて、大型車の責任負担額の推計も行う。これには、利用者負担額を車種・道路種・地域別に試算したうえで、現行負担額との比較、燃費との関係、年間走行距離との関係といった観点から分析する。 さらに、対距離課金、整備財源制度に関するサーベイも引き続き実施する。一橋大学、国土技術総合研究所、日本交通政策研究会などにあるデータベースや文献資料を活用しながら、ドイツのGPSと携帯電話通信を活用した高速道路対距離課金、スイスにおけるDSRC、タコグラフを活用した大型車対距離課金、フランスのエコタックスなどの事例を中心にサーベイを行う。 最終年度である平成27年度においては短期および長期の費用関数の推計を行ったうえで、大型車対距離課金による道路整備のシミュレーション分析を実施する。
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