研究課題/領域番号 |
25380284
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
冨浦 英一 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (40273065)
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研究分担者 |
伊藤 萬里 専修大学, 経済学部, 准教授 (40424212)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 貿易自由化 / 個人特性 / サーベイ・データ / 地域特性 |
研究実績の概要 |
貿易自由化に対する選好等について日本の約1万人に調査したデータを引続き用いて、個人特性との統計的関係を分析する研究を行った。平成27年度においては、特に、狭義の個人特性だけでなく個人が居住する地域の特性(就業者の産業構造など)の影響に着目した。また、貿易自由化について、一方的自由化と互恵的自由化を区別した分析も行った。我が国においては、工業製品の輸入障壁が総じて低いのに対して、農産物の輸入自由化が政策的課題となっているため、農業従事者に輸入自由化に反対する者が多いことが確認されているが、こうした二つのテーマを考えることでどのような変化が生じるのかについて研究を深めた。 まず、地域特性の影響については、本人が農業に従事していなくても、農業従事者の比率の高い地域に居住する者は、輸入自由化に反対する傾向が有意に強いことが明らかになった。このことは、農業従事者が人口に占める割合が低いにも関わらず農産物の輸入自由化への反対が広く先進国で見られることと整合的である。個人自らの賃金・就業機会だけでなく地域経済の相互連鎖や住民間の外部性が影響している可能性があると考えられる。 互恵的自由化については、輸入自由化に強く反対する農業従事者において互恵性(相手国も自由化することが自国が自由化する前提条件)が重要とする意見が特に強いことが見出された。これに対し、農業に従事してない保護主義者の間では互恵性は特に重視されていない。輸入自由化への支持を広げるに当たって、互恵性の意義を示唆していると解釈することができよう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者が平成27年度途中で所属研究機関を異動し、研究体制の整備に時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究に用いたデータを今後の研究に活用できるよう整理するとともに、これまでの研究成果を学術論文にまとめ国際学術査読誌に投稿する。具体的には、貿易政策の個々人の支持に関する個別データは利用許可を要するものだが、その分析を行う上で重要な地域変数(就業者に占める農業従事者の比率、失業率等)を今後の分析に活用できるよう整理しておく。また、地域特性の影響に関する研究、貿易自由化における互恵性の重視の関する研究、貿易自由化と比較した移民に対する支持に関する研究について、それぞれ論文としてとりまとめ、研究発表を行い関連分野の研究者のコメントを受け、国際学術査読誌に投稿し掲載を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が平成27年度途中で所属研究機関を異動し、研究体制の整備に時間を要したため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究に用いたデータを整理するとともに、研究発表を行い研究者のコメントも求めつつ、研究成果を学術論文にとりまとめ国際査読誌に投稿する。このため、データ整理に必要があれば適切な人材の確保が可能となった時点でリサーチ・アシスタントを雇用することを計画する。また、研究会・コンファレンスに出席して研究発表を行うため、出張関連費用が支出される。国際査読誌への掲載を目指し、英文校閲を依頼する他、投稿料の支払も要すると見込まれる。
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