研究課題
研究期間の最終年度に当たって、応用一般均衡分析の手法を用いて、4つの主要な研究成果をあげた。1つめは、主要農産物(コメ、小麦、大豆、トウモロコシ)の生産性ショックが発生した場合に日本経済が受ける影響を計測し、貿易自由化がそのショックを和らげ、食料安全保障に貢献することを示した。2つめは、日本による対中海外直接投資が減少したリーマンショックのような状況を再現して、直接投資の減少が日本と中国に与える影響を分析した。そこでは世界経済モデルをさらに精緻化して、直接投資を陽表的にモデル化した。すなわち、日本から中国への直接投資を通じて資本が日中間で移動する。また、中国国内で、中国の国内企業と日系の現地法人が競合する。さらには、中国で生産されたものが日本国内に輸入される、いわゆるブーメラン効果を考慮したという点で新しい分析手法となっている。3つめは、台湾北部を想定して、大震災が発生した場合に台湾経済、とりわけ、その主要産業たる半導体や電気・電子部品産業が受ける影響を明らかにした。そこでは、市・郡単位で示される台湾の震災評価データベースの情報を元に、震災の直接的影響を、労働と資本がそれぞれ減少する形でモデル化する。加えて、東日本大震災後の原発停止のような状況を考えて、台湾のすべての原発が停止し、火力発電に代替される(化石燃料の投入が増える)ことを想定する。これら3種類のショックの個別の影響と、すべてが発生した複合災害の影響を測った。以上の3つの研究は、いずれも査読付き英文学術雑誌に受理された。最後に、これらの研究で用いられる応用一般均衡モデルに関する教科書を東京大学出版会から刊行した。このテキストは、2004年に第1版を刊行したものであるが、その後の研究成果の蓄積を反映して、とくに、動学的応用一般均衡モデルやシミュレーション分析の手法とデザインについての知見を加えた。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 4件) 図書 (1件)
Journal of Asian Economics
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Review of Urban & Regional Development Studies
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馬奈木俊介(編著)『原発事故後のエネルギー供給からみる日本経済』,ミネルヴア書房