研究課題/領域番号 |
25380287
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 子供の貧困 |
研究実績の概要 |
本研究では、以下の目的で日本における子どもの貧困分析を行った。第一に『全国消費実態調査』(調査A)と『国民生活基礎調査』(調査B)の家計調査の間で異なる子どもの貧困率を比較し、調査間で発生する貧困率の差異の原因と、その世帯属性毎に見た差異の分析である。第二に、子ども時代の貧困経験が成人になってから与える影響(学歴、所得、幸福度等)の解明である。第三に、子どもの年齢別に貧困を分析し、年齢に応じた貧困状況を明確化することで、効率的な経済政策の必要性を考察することである。その成果は以下の通りとなった。 第一に、所得に関して (調査A)と (調査B)の家計調査の間で異なる子どもの相対的貧困率を比較した。同じ定義を使用しても(調査B)に比較して(調査A)に基づいた貧困率の方が低水準となり、この差異の原因分析を行った。(調査B)と異なり、(調査A)には家計簿をつける必要がある。そのため機会費用の高い高所得世帯と家計簿の記録を正確にする余裕のない低所得世帯は(調査A)のサンプルから抜け落ちることによって、両調査の貧困線はほぼ同じだが、(調査A)に基づき算出した貧困率は低くなるという結果が得られた。 第二に、子ども時代の貧困経験が成人時の低学歴、低所得、幸福度の低さ等に与える影響を分析するために、引き続き「くらしの好みと満足度についてのアンケート」のデータ整理・編集と回帰分析を継続中である。 第3に、日本における子どもの貧困を示す指標として、(調査A)のマイクロデータに依拠する世帯別の所得もしくは消費を基準とした2種類の指標を算出し、両者を比較分析した。そして、所得基準で計測する場合と比較して、消費基準で計測した場合の方が子どもの貧困を示す世帯数が少なくなるという結果を得た。さらにこの差異の発生理由として考えられる3つの要因(所得の過少申告、消費の過大申告、消費の平準化)の分析を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究内容は、おおむね匿名データの整理および編集であり、過去に『全国消費実態調査』を利用した類似の作業経験があるため、順調に進展している。『国民生活基礎調査』に関しては、この調査の利用経験があまり無いためデータ整理・編集に若干時間を要したものの、予定通り今年度末に分析の目的を達成することができた。「くらしの好みと満足度についてのアンケート」のデータ整理・編集も順調に進んでおり、次年度予定している回帰分析への準備が整いつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策については、第一に、日本における子どもの貧困率は、所得を基準にする場合と消費を基準にして算出する場合で異なる値が導出されるという結果に基づき、これら二つの貧困率の比較を継続して、子どもの貧困に対する子どもの年齢の影響を分析する。これらの推計結果を利用して効率的な経済政策の必要性を考察し、論文を執筆する。また、国内外の学会等で研究報告を行う。 また大阪大学の「くらしの好みと満足度についてのアンケート」データを利用し、子ども時代の貧困の経験が成人時の低学歴、低所得、幸福度の低さ等に与える影響を推計するために回帰分析を行う予定。逐次的な多変量プロビット(recursive multivariate probit)手法を利用し、子ども時代の貧困経験が成人になってから与える影響を推計し、この推計結果を利用して論文を執筆する。同時に、国内外の学会等で研究報告を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品の依頼時点よりも安価に提供する業者があったため
|
次年度使用額の使用計画 |
図書の購入
|