研究実績の概要 |
昨年度から取り組んでいた最適な焼却炉の配置に関する分析を、"Dilemma between two proper treatment of waste"という論文としてまとめた。これは、Salop型の円周モデルを利用して、地方政府がそれぞれに焼却処理費用の最小化を考えた場合に最適な焼却施設数を達成できるかどうかを検討したものである。昨年度も述べたたようにこの背景には、過大な焼却施設がリサイクル可能なものを飲み込んで、リサイクル率を減少させる原因になっている状況が世界各地でみられることがある。通常のSalop型のモデルでは市場均衡は過大な参入をもたらすが、本論文では、Gu and Menzel(2009, IJIO)にならって、需要が価格弾力的であるという設定を導入しているため、条件によっては参入が過少となる場合もあることを指摘した。我が国では焼却炉建設への補助金が徐々に制限されつつも引き続き広く利用されている。過大な参入がみられる状況下で焼却炉建設の補助金を交付することは、現状の経済厚生の歪みをさらに悪化させることになることに注意が必要である。
この理論的な結果をサポートするために、Thomas Kinnaman教授(Bucknell University)とともに、実証的な分析も行っている。1次分析の結果をみると、焼却炉のキャパシティと自治体のリサイクル率の間には負の相関が有意にみられることが明らかになった。今後は、この実証分析をさらに精緻化し、前半の理論的結果を補完するものとして論文としてまとめ、投稿することを目指していく。
|