• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2014 年度 実施状況報告書

政治・行政機構が知的財産保護政策に与える影響と経済成長に関する動学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 25380290
研究機関金沢大学

研究代表者

池下 研一郎  金沢大学, 経済学経営学系, 准教授 (80363315)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2017-03-31
キーワード経済成長 / 政策形成 / 知的財産 / 政治献金
研究実績の概要

本研究は政治経済学的な方法を導入し,知的財産保護制度の形成プロセスを内生化することによって,知的財産保護制度がなぜ国家間で異なるのか,そのことが経済成長にどのような影響を与えているのかについて明らかにすることを目的としている。
この目的にそって本年度も知的財産保護制度に関する理論的研究・実証的文献を収集した。特にAghion, Howitt and Prantl(2014)については知的財産保護制度と競争政策の関係を考察するうえで有効なフレームワークを提示しており,今後の研究に生かすことができる可能性が高い。また他にもBoldrin and Levineの著書"Against Intellectual Monopoly"や石橋秀喜氏の著書『パテントトロール』を検討する過程でも有益な知見を得ることができた。
一方でモデル分析については従来の分析を拡張し,バラエティ拡大型の内生的成長モデルに,企業による自発的な献金行動を組み込むことを試みたが,モデルに企業側のインセンティブをうまく取り込むに至っていない。そこで現在では研究方法を若干修正しシュンペーター型の内生的成長モデルをベースをモデル分析を行っている。実際にシュンペーター型の成長モデルの応用として,方向づけられた技術変化(Directed Technical Change)と環境分析と関連付けた論文を執筆した。この論文では従来より広いパラメータの範囲において環境技術の進展が妨げられ,環境の悪化が加速度的に進展することを明らかにした。また科研費の研究内容と直接関係があるわけではないが,途上国における児童労働と資本蓄積の相互依存性や児童労働抑止政策の効果についてもモデル分析を行い,その成果を内外の学会で発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の研究計画では平成26年度においては,今までに構築した理論モデルをより発展させて,民主的な意思決定機構をモデルの中に導入する,もしくは官僚機構と特許を持つ企業の間の結託を考察するという研究を行う予定であったが,企業や官僚機構のインセンティブに基づいた行動様式をモデル化することが難しく,まだモデルを完成させるに至っていない。またデータ分析についても残念ながら十分な結果が出せていない状態である。理由としては分析するモデルが複雑になりがちであることや,平成26年度は学内業務が増え時間的な制約が非常にきつくなっていたことが挙げられる。これらの状況を総合的に考慮して平成26年度の達成度を「やや遅れている」と判断した。ただこの遅れはモデル分析上のアプローチの変更や学内業務負担の軽減によって平成27年度には十分に取り戻すことができると考えられる。

今後の研究の推進方策

平成27年度は最終年度であるため,今までの政治経済学的な分析を発展させ,政治的・制度的要素,例えば政治体制・官僚機構,賄賂などの存在が,どのように政策形成過程に作用するのかを分析する。また平成27年度は今までの分析を開放経済に拡張し,知的財産保護の国際的波及効果や国際的な知的財産保護のスキームの問題について研究を進めていきたい。特に今まではモデル分析が過度に複雑になりすぎてしまい,その結果として研究上の遅れを生じさせてしまったため,より簡便なAghion and Howittらのシュンペーター型成長モデルを利用して研究を進めていく予定である。また国内の政治経済学・マクロ経済学分野の研究者とも議論を行い,研究上の助言を受け研究を加速させる。
一方で実証分析については収集した統計資料や理論モデルの結果をもとに,どのような制度的・経済的要因が各国の知的財産保護制度に影響しているかについて実証的に検証したい。具体的にはモデル分析を行うことによって,知的財産保護政策は他の外部パラメータ(民主主義の程度,利益団体の交渉力,ロビイングの程度,研究開発部門の重要度,教育水準など)に依存するものと予想されるが,この知的財産保護水準と他の外部パラメータとの関係を実証研究によって確認する。
今後はそれらの成果を論文として取りまとめ,国内の諸学会や国際コンファレンスで報告し,レフェリーつきのジャーナルに投稿する。また平成27年度については経済成長・マクロ経済学の研究者を金沢大学に招き,研究会を開催し意見交換を行う予定である。最終的には3年間の研究成果を取りまとめ,報告書を作成し,これからの知識基盤社会にとって望ましい知的財産保護制度について政策提言を行う。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] A Phase Diagram Analysis on “The Environment and Directed Technical Change”2015

    • 著者名/発表者名
      Kenichiro Ikeshita, Nakamura Tamotsu and Osumi Keisuke
    • 雑誌名

      Economics Bulletin

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 児童労働抑止政策の経済分析2014

    • 著者名/発表者名
      池下研一郎
    • 学会等名
      九州経済学会第60回年会
    • 発表場所
      九州大学(福岡県福岡市)
    • 年月日
      2014-12-06 – 2014-12-06
  • [学会発表] グローバリゼーションと経済成長2014

    • 著者名/発表者名
      池下研一郎
    • 学会等名
      日本応用経済学会春季大会
    • 発表場所
      中央大学(東京都八王子市)
    • 年月日
      2014-11-15 – 2014-11-16
  • [学会発表] Child Labor and Capital Accumulation in Developing Economy2014

    • 著者名/発表者名
      Ken-ichiro Ikeshita and Hideaki Uchida
    • 学会等名
      Annual Conference of Chinese Association of Quantitative Economics
    • 発表場所
      浙江財経大学(中国浙江省杭州市)
    • 年月日
      2014-10-18 – 2014-10-19
  • [学会発表] Child Labor and Capital Accumulation in Developing Economy2014

    • 著者名/発表者名
      Ken-ichiro Ikeshita and Hideaki Uchida
    • 学会等名
      日本応用経済学会春季大会
    • 発表場所
      徳島大学(徳島県徳島市)
    • 年月日
      2014-06-21 – 2014-06-22
  • [備考] 金沢大学研究者情報

    • URL

      http://ridb.kanazawa-u.ac.jp/public/detail.php?id=2413&page=1&org2_cd=320800

URL: 

公開日: 2016-05-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi