研究課題/領域番号 |
25380293
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
金 早雪 信州大学, 経済学部, 教授 (20186307)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 韓国・朴正煕政権時代 / 経済開発と生活政策 / 「救護行政」 / 一次資料の分析 |
研究概要 |
平成25年度は、1960年代から70年代の朴正煕政権前半期における、経済開発戦略と、その一環におかれた「救護行政」の改革と展開に焦点をあてて、訪韓調査(平成25年8月)などで得た韓国政府の一次/行政資料をもとに、査読付き論文2本と関連する資料検証ノート1本、合計3本を、いずれも『信州大学経済学論集』第65号(平成26年3月)に発表した。検証対象資料は、韓国政府の1960~70年代の経済開発5ヵ年計画と社会・生活政策に関する公式資料・行政統計、及び保健社会部付設「社会保障(制度)審議委員会」(1962年設置、82年に韓国保健社会研究院に吸収、略称「社保審」)と同委員による調査研究書などである。 研究成果は、①査読付き論文「1960年代前半の韓国における「反共国家」建設と生活政策――「救護行政」改革とその意義――」において、現代韓国の生活政策の基点が1961年に登場した朴正煕軍事政権の経済開発計画にあること、その内容は、「救護行政」の予算と制度の徹底した節減と合理化において始まったことを論じた。②査読付き論文「韓国・朴正煕政権時代の経済成長戦略と社会保障構想――社会保障審議委員会研究室の挑戦――」では、1970年代に、経済成長優先に対して、「社会開発」との併行を提起した、異端の「社会保障審議委員会」グループの活動、主張とその意義と限界を解明した。③研究ノート「韓国の初期社会・生活行政をめぐる資料検証(その4)――崔千松と社会保障審議委員会研究室の活動軌跡――」は、「社会保障審議委員会」約2年間の調査研究の軌跡を整理するとともに、同委員会を率いた崔千松の思想と社会活動について検証した。①②③とも、韓国の保健福祉部資料室などが蔵する一次資料を精査するなど、韓国でもなされていない実証研究と自負する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は、1960年代の「救護行政」改革のみにとどまり、1970年代は次年度にまたがる可能性を想定していたが、資料検証の進展がスムースであったため、1970年代に関わる部分についても、査読付き論文2本と研究ノート1本を仕上げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、25年度の成果について学会・研究会等で発表するとともに、1970~80年代における経済・社会変化を受けて、「救護行政」が限界を呈していく実態を取り上げる。平成27(最終)年度は、韓国の1960~80年代における経済開発と社会・政策の展開が、1990年代の福祉革命につながることに焦点をあてるとともに、理論仮説の提示を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
3年間継続の2年目であるが、初年度が当初計画で見込んだよりも安価で研究が遂行できたため。 物品費に充てる。
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