昨年度に引き続き、輸送における規模の経済を導入した港湾競争の分析をさらに発展させた。二国のそれぞれにハブ港湾があり、第3地域からの積み替え需要をめぐって競争する状況を想定する。第3地域における利用者が積み替えのためのハブ港湾選択行動をロジットモデルにより定式化し、いくつかの理論的性質を解析的に導いた。主な結果は次の通り。(1)各港湾事業者が利潤を最大化するように港湾容量を選択する場合、規模の経済効果が大きくなるほど、均衡における港湾容量が大きくなる;(2)規模の経済がない場合には均衡における港湾容量は最適に比べて過小であるが、規模の経済が強くなると過大になる。東南アジアのシンガポールとマレーシアのデータに基づいてパラメータを設定し、数値シミュレーションを行った。その結果、均衡と最適の間には、量的なかい離が生じるだけでなく、容量の配分パターンにおいてもかい離が生じることが明らかになった。すなわち最適ににおいては2港湾の内1か所に投資を集中させるようなパターンであるのに対し、均衡では両港湾が積極的に投資を行うので集中化は生じない。今後は、料金政策の内生化、ローカルな需要を考慮すること、そして政府による介入政策の評価などの研究課題が残されている。
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