研究課題/領域番号 |
25380295
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐々木 啓明 京都大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (70534840)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 経済成長 / 人口減少 / 国際貿易 / 貿易パターン |
研究概要 |
本研究のテーマは,人口成長率がマイナスの経済において,貿易パターンと経済成長の間にどのような関係があるのかを理論的に分析することである.その際,成長率に関して規模効果のない半内生的成長モデルを構築する.本年度は,2本の論文を作成した. 1本目の論文では,小国開放経済モデルを構築し,人口成長率が負の場合,長期的な貿易パターン,および,長期における1人当たり消費成長率がどのように決定されるのかを分析した.分析により,以下の結果が得られた.自国の人口成長率が負で,その絶対値が小さい場合,長期的に自国は農業に完全特化する.このとき,自国の1人当たり消費成長率は正であり,世界の人口成長率に依存する.これに対して,自国の人口成長率が負で,その絶対値が大きい場合,自国は工業に完全特化する.このとき,自国の1人当たり消費成長率は正であり,自国の人口成長率と世界の人口成長率の双方に依存する.アウタルキーと自由貿易を比較すると,人口成長率が負であっても,自由貿易のほうが厚生は高くなる. 2本目の論文では,大国同士が貿易を行う2国モデルを構築し,自国と外国の人口成長率の大小関係および正負の関係に応じて,長期的に持続可能な貿易パターンはどのようなものか,そして,長期における両国の1人当たり消費成長率はどのように決定されるのかを分析した.両国の人口成長率が異なるかぎり,工業製品を生産し資本蓄積を行う国の人口成長率が負であるならば,いかなる貿易パターンも長期的に持続不可能である.これに対して,工業製品を生産し資本蓄積を行う国の人口成長率が正であるならば,2種類の貿易パターンが長期的に持続可能であり,両国の1人当たり消費成長率は,貿易パターンに応じて決定される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は当初の計画以上に進展した.当初の計画では,本年度は,小国開放経済のモデルを構築し,解析的手法および数値シミュレーションを用いた分析を行うことであった.実際,本年度は,小国開放経済のモデルを構築し,解析的手法を用いた分析を行い,論文を完成させた.そして,その論文を国際的な学術誌に投稿し,採択されるに至った.さらに,本来は翌年度の目的であった,大国同士が貿易を行う2国モデルを構築し,解析的手法を用いた分析を行い,論文を完成させた.今後,この論文の改訂を進め,国際的な学術誌に投稿することを目指す.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,本年度に基本部分を構築した2国モデルを洗練させることを目指す.具体的には,以下のことを行う. まず,今回の基本モデルでは,消費者の動学的最適化を考慮せず,アドホックな消費・貯蓄行動を仮定していた.これは,分析を簡単化するための方策であった.しかし,得られた結果がこのアドホックな仮定に依存している可能性があり,頑健な結果であるとは言えない.そこで,消費者の動学的最適化を明示的に導入し,モデルを洗練させることを目指す.これにより,分析は複雑になるが,得られる結果は頑健になると考えられる.モデルが複雑化する結果,解析的手法による分析は困難になるかもしれないが,数値シミュレーションを行うことは可能であると予想される. つぎに,貿易パターンの内生化に関する分析を発展させる.本年度の分析は,ある貿易パターンを仮定し,長期的にその貿易パターンが持続可能かどうかを分析するものであった.しかし,本来であれば,任意の初期状態から出発して,長期的な貿易パターンに到達するまでの,移行過程も分析する必要がある.今後はこの移行動学の分析にも注力する.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の計画では,解析用コンピュータと数値計算ソフトを購入することになっていた.しかし,本年度は解析的手法による分析を重点的に進めたため,これらを購入しなかった.そのため,次年度使用額が生じた. 次年度は,数値シミュレーションを用いた分析を重点的に進めるため,25年度からの繰越額と合算して,解析用コンピュータと数値計算ソフトを購入する予定である.
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