研究課題/領域番号 |
25380302
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
村上 英樹 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (90243295)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 低費用航空会社 / ULCC / 寡占競争 / 経済厚生 / 米国の航空産業 / 日本の航空産業 / 空港間競争 |
研究概要 |
本年度は科研表題に関する研究として、米国の事例と日本の事例に関する基礎的研究を行った。米国の自邸については、米国におけるサウスウエスト航空やジェットブルー航空といった従来型のLCCの運賃戦略転換、スピリット航空、フロンティア航空、及びヴァージンアメリカ航空といった新世代のLCC(ULCC、ウルトラローコストキャリア)の価格戦略を重点的に研究した。またそれらの従来型のLCC、及びULCCに対抗する大手航空会社の対抗価格戦略に関する研究も併せて行った。特にプライマリ空港という大都市圏の中心空港と、セカンダリ空港という郊外に立地するLCC専用空港との間での航空会社の競合についても重点的に研究を行った。 日本の航空産業については、新規LCC、特に全日空傘下のピーチアビエーションおよびバニラエアの価格及びサービス戦略分析、エアドゥ、スカイネットアジア航空、及びスターフライヤーなど、かつて「新規航空会社」と呼ばれた航空会社群の価格及びサービス戦略分析、並びに日本航空及び全日本空輸といった大手企業のそれらについて研究を行った。 いずれの研究も航空会社の利益並びに消費者の利益の合計がいかに達成されているかを産業組織論及び計量経済学を通じて明らかにしようとするものである。現状況では米国の研究は予備的考察の段階、日本のケースについては現在海外査読誌に投稿中である。 これらの視点から米国のULCCとそれを取り巻く航空会社の分析を行った研究はいまだ海外においても存在しない。また日本の事例についてこれらの分析手法を用いた研究もいまだに存在しない。これらの事情を勘案すると、これら2つの課題は今後2年間も継続する必要があり、ともに世界最先端の成果を収めることができると確信する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
米国の航空産業の分析に関しては主に公刊データのみ利用で、フォートローダデール・ハリウッド空港をベース空港とする、ULCCであるスピリット航空、既存のLCCであるサウスウエスト航空とジェットブルー航空、及びアメリカン航空とデルタ航空の運賃競争分析を計量経済学の手法を用いて主ない、既に雑誌『都市問題』2014年5月号に分析結果が掲載された。初年度の研究成果が2年度初頭に公刊されることは当初予想していなかったため、ある程度順調であると考える。この論文については今後海外査読論文に発展させ、本年度内に投稿をする予定である。注目すべき成果は、かつてのLCCのサウスウエスト航空が、現在では大手を上回る高い価格を設定する傾向があることが判明した。また、このサウスウエスト航空とスピリット航空が競争を行っているという仮説を立てたものの、結果としてサウスウエスト航空はスピリット航空の低運賃戦略に追随せず、独自に差別化を行っていると考えられる。航空会社の利益はある程度維持されており、消費者のトータルの利益は今後さらなる実証結果を待たなければならないが、少なくとも非常に安いチケットを販売する航空会社と、高価ではあるが安心感のある航空会社の2種類から選択をできるようになったのは確かである。 日本の航空産業については、エアドゥ、スカイマーク、スカイネット航空、スターフライヤー、日本航空及び全日本空輸に関する競争分析を行い、企業の中は赤字転落したものの消費者の利益が企業の損失額よりも大きくなることが判明した。これを海外投稿した一方で、さらに2012年のピーチアビエーションなどのLCCの参入に関する資料を得るため、エアドゥ、スカイネット航空、スターフライヤー、及び全日本空輸を訪問または神戸大学に招待して、大手航空会社、旧新規航空会社、およびLCCに関する情報を入手し、合同研究会を通じて意見交換を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
米国の航空産業の研究については、本年度中にULCCであるフロンティア航空の事例を分析し、スピリット航空に関する分析と合わせ、「米国の航空産業における企業群の3層構造と市場行動・市場成果(仮題)」として海外査読雑誌(Transportation Research A)に投稿する予定である。また現在日本の航空産業における競争行動分析の論文が条件付き採択になっているので、この論文の正式出版を目指すとともに、更にピーチアビエーションなどの新規LCCのデータを加えた分析の完成を目指す。
|