研究課題/領域番号 |
25380304
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
実積 寿也 九州大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (20325690)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 経済政策 / ブロードバンド / OTT / インターネットガバナンス / エコシステム |
研究概要 |
平成25年度は、ブロードバンドインフラの存在を前提としてエコシステムの形成を図るOver The Top(OTT)産業をめぐる規制フレームワークの問題に着目した。具体的には、インフラ保有に由来する自然独占力の発揮を抑制することを主眼として構築されていた従来型の規制に代えて、消費者保護を主たる規制根拠とする新たな規制体系の導入を図るべきであるとの主張をまとめ、5月31日にコロンビア大学で開催されたワークショップで報告を行い、有識者と意見交換を行った。今後は、意見交換で得られた知見を反映して議論の精緻化を進め、OTT産業の重要性を明示的に考慮した理論モデルの構築につなげる予定である。 次に、OTT産業の活動にとって不可欠なインフラであるインターネットのガバナンスのあり方を巡る問題については、ネットワーク保有者による通信内容のコントロールの可否の問題(ネットワーク中立性問題)として議論されているが、本件については日本の状況を韓国で開催されたAPrIGFの場で招待講演を行い、韓国および欧米の有識者と意見交換を行った。さらに、米国のオープンインターネット命令に関する2014年1月の米国連邦控訴裁判所の決定や、EUでの議論の状況について現状調査・分析を行っている。 最後に、OTTサービスに対する消費者行動を明らかにするため、電子商取引市場における個人情報の取扱いに関する消費者側の支払意思額を実証的に分析し、イタリアで開催された国際電気通信学会(ITS)で報告を行い有識者と意見交換を行った。さらに、OTTサービス自体に対する消費者行動を解明するため、OTT電話サービスの利用動向に関するアンケート調査を実施し、次年度以降の報告の準備を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の目的として挙げていた三つの項目(OTT産業の重要性を明示的に考慮した理論モデルの構築、各国の情報通信政策におけるOTT産業の位置づけの調査、OTTサービスに対する消費者行動の解明)についてはそれぞれ順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は当初の予定通り、平成25年度に達成した成果を発展させて三つの目的(OTT産業を陽表的に組み込んだ最適規制フレームワークの検討、OTT産業の基盤となるネットワークインフラの品質問題に関する情報収集、中間的成果の公表)の遂行を目指す。このうち、ネットワークインフラの品質問題については、現在、総務省で行われている検討(「インターネットのサービス品質計測等の在り方に関する研究会」)に対し、パブリックコメントなどの経路を通じて適宜、研究成果を反映させることを試みる。平成27年度以降についても交付申請書に記載どおりの進行を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に予定していた「各国の情報通信政策におけるOTT産業の位置づけの調査」に関連して、当初計画を超える調査・打合せ等が必要となり、予定を超える出張旅費の支出が必要となった一方で、当該年度に予定していたアンケート調査については定点評価の意味合いもあり2014年3月までに実施する必要があったため、アンケート経費等の不足分について前倒し支払い請求を行った。支払い請求額に前倒し支払請求額を追加した額のほぼ全額を予定通り使用し、6941円のみが残額となった。 残額は少額であり、前倒し支払請求書に記述した通り、平成26年度の国内出張回数を1~2回程度減少させるなどして調整する。
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