研究課題/領域番号 |
25380306
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
深川 博史 九州大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (30199153)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | FTA / 農業問題 / 競争力比較 |
研究実績の概要 |
FTA交渉上の課題として農業問題をとりあげ、日韓の農産物貿易を素材として、両国農産物の競争力について比較分析を進めた。両国の貿易統計等から比較可能なデータを選択し、幾つかの指数による分析を加えた。本年は、それらの分析結果の一部を論文に公表した。本年度の分析データについては、検討を加えたうえで、次年度以降、引き続き分析結果を公表していく予定である。 日韓FTA交渉に関する先行研究では、日本の農産物の競争力低位が交渉遅延の原因とされており、本年度は、貿易特化指数 TSIと顕示比較優位指数 RCAによる競争力分析の、分析結果を公表した。代表者のこの分析は、昨年までの、日韓の農産物輸出額による競争力比較、日韓の関税比較と韓国の輸入規制の考察、保護貿易水準PSEを用いた競争力比較に続くものである。 先行研究では日韓の農産物の競争力については、最近のデータによる分析が進められていなかった。そのため十分な競争力比較を行い、FTA交渉における農業競争力ついて評価をすることが困難であった。そこで代表者は、最近のデータに基づいて、競争力比較分析を進めた。今回の、貿易特化指数 TSIによる競争力分析、顕示比較優位指数 RCAを用いた競争力分析により、日本の農産物の競争力が、必ずしも韓国より低いとは言えないことが明らかとなった。これは先行研究の主張とは異なる結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、FTA交渉上の課題として農業問題をとりあげ、日韓の農産物貿易を素材として、両国農産物の競争力について比較分析を進める予定であった。日韓FTA交渉については、中国が参加して、日中韓FTA交渉として再開されようとしているが、日中と中韓のFTAに比べて、日韓のFTAが依然として交渉困難であるという構図は変わらない。農業問題に関わる交渉で難航が予想されるからである。その農業問題の要が、韓国側が主張する、日韓の農業競争力における日本の低位性である。本研究ではそのような主張の根拠となる先行研究に疑問を抱き、分析を進めている。途中段階の分析の成果は、やはり、日韓の農業競争力に関して、韓国側優位の評価に疑問を抱かせるものとなっている。必ずしも日本の競争力が低くないという状況が、近年のデータから示されている。 本年度は、両国の貿易統計から比較可能なデータを選択し、幾つかの指数による分析を加えた。研究期間全体において、日韓の関税比較と韓国の輸入規制の検討、保護貿易水準PSEの日韓比較、貿易特化指数 TSIによる競争力分析、顕示比較優位指数 RCAを用いた競争力分析を行う、計画であった。昨年までの段階において、日韓の関税比較と韓国の輸入規制の検討、保護貿易水準PSEの日韓比較、が終了しており、本年度は計画通り、貿易特化指数 TSIによる競争力分析、顕示比較優位指数 RCAを用いた競争力分析を行った。これらの分析の結果、先行研究と異なり、日韓の競争力は必ずしも、韓国において高いとは言えないことが明らかとなった。この結果は、多くの先行研究とは、異なるものであり、さらに分析を進める必要があると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、FTA交渉上の課題として農業問題をとりあげ、日韓の農産物貿易を素材として、両国農産物の競争力について比較分析を進めた。両国の貿易統計から比較可能なデータを選択し、幾つかの指数による分析を加えた。それらは、貿易特化指数 TSIによる競争力分析、顕示比較優位指数 RCAを用いた競争力分析である。 これまでの分析の結果は、日韓の農業競争力に関する、韓国側優位という先行研究の成果に、疑問を抱かせるものとなっている。これは、日韓FTA交渉が2004年に始まり、様々な分析が行われてきているが、この間に、日韓の農業競争力に変化が現れ、韓国優位の構図が崩れてきているという要素も含まれている。しかしながら、先行研究が行った分析の手法や、分析対象の品目に関しては、様々な問題のあることも、明らかになってきている。それらの先行研究の分析に関わる問題点や、近年の状況変化なども含めて、今後は、競争力分析の成果をまとめていく計画である。 最終年度は、従来の研究である、日韓の関税比較と韓国の輸入規制、保護貿易水準PSEの日韓比較、貿易特化指数 TSIによる競争力分析、顕示比較優位指数 RCAを用いた競争力分析の結果をまとめた上で、先行研究との相違点を体系的に示す予定である。これらの分析結果の公表により、FTA交渉における農産物の競争力比較に関して、学術的貢献が期待される。
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