研究課題/領域番号 |
25380308
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
工藤 健 長崎大学, 経済学部, 准教授 (70404316)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 超低金利政策 / 国際資本移動 |
研究実績の概要 |
国際資本市場の統合度合いが金融政策の効果に及ぼす影響について分析するため、国際資本移動が不完全な場合を想定した小国開放経済モデルを構築し、国内外で非対称なショックが発生する場合の金融政策の反応分析を行った。その結果、次のことを明らかにした。 (1)政策金利の下限を設定すると、国際資本移動が不完全な状況では厚生損失の発生が不可避であること、(2)国際資本移動コストが高くなるほど、景気安定化のために長期間の金融緩和が必要になること。 したがって、国際的な金融市場の混乱などに伴い、国際資本移動コストが高まると、より強固かつ長期間の金融緩和が必要になることから、2008年以降の世界的な金融危機の広がりが、先進各国の超低金利政策の長期化に影響をおよぼしているのではないかという推測が得られる。 以上の内容は、長崎大学経済学部編『知の地平を越えて:長崎高等商業学校から長崎大学経済学部への100年』ファイナンス編第2章として刊行された。 また、「金融政策運営におけるコア・インフレーション指標の検討」では、2015年12月に研究報告した論文原稿の改定中であり、国内外の学会報告への投稿に向けて準備を進めている。 このほか、2016年度から長崎大学中て研究課題プロジェクト「企業の誕生と成長を通じた地域経済再生に関する国際的研究拠点の構築」に参加し、金融政策などのマクロ経済環境と企業金融との関連について分析を進めるべく、科学研究費助成事業に共同で申請中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
上記の判断は、以下の理由によるものである。 (1)金融政策ルールに関する研究の一部は刊行に至ったが、実証分析の部分について、データ更新の必要から、研究の進捗が遅れている。 (2)限定合理性の下での政策反応の分析については、現状の研究規模では十分な成果を得られる見込みが薄いと判明した。
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今後の研究の推進方策 |
学内の共同研究プロジェクト(長崎大学重点研究課題「企業の誕生と成長を通じた地域経済再生に関する国際的研究拠点の構築」)において進めている、企業財務データに基づく量的緩和政策効果の分析を進めて、金融政策ルールに関する研究を補完する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
「限定合理性に基づく政策効果分析」の実施が困難になったことや、「金融政策運営におけるコア・インフレーション指標」論文執筆の進捗の遅れにより、学会報告を実施できず、翌年度に繰り延べたことによるものである。
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次年度使用額の使用計画 |
全額を学会報告のための旅費として使用する計画である。
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