研究課題/領域番号 |
25380309
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
吉田 素教 大阪府立大学, 経済学研究科, 准教授 (60360046)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 政府財政の持続可能性 / 政令指定都市 / 中核市 / Bohn / パネルデータ |
研究実績の概要 |
平成28年度は「日本の政令指定都市財政と中核市財政の持続可能性」に関する研究に取り組んだ。当該研究課題は平成27年度末から取り組んできたものであり、本年度も継続して取り組むことにより、研究内容を発展・精緻化させた。研究内容の詳細は次のとおりである。政府が債務残高の累増に対応して財政運営を健全化させているかどうかを検証するツールとして、「Bohn (1998)の方法」がある。しかし、地域経済規模に関するデータの制約から、これまでのところ当該ツールを用いた、日本の市町村財政に関する持続可能性の検証は実施されてこなかった。そこで、本研究では、課税関係データを利用することにより上記問題を克服したうえで、最も基礎的な政府である各市財政の持続可能性を検証することとした(なお、分析に用いるデータの特徴から当該分析はパネルデータ分析となる)。当該研究の実施により、国-都道府県-市町村という、各政府階層に対する分析手法が確立されることとなった。 そして、本研究の実施により、次の知見を得た。1) 政令指定都市は、ある程度、持続可能な財政運営を行っている状況にあると判断できる一方、中核市に関してはそれを見出すことができないこと。2) 中核市においては景気が悪くなると財政規律が緩む傾向にあること。3) 都道府県を対象とした既存研究では,固定効果モデルが一般的に採択されている一方、本研究ではプーリング回帰モデルが採択されること:本研究は、同じ行政権能を持った市を分析対象としていることから、比較的似た社会経済・財政状況下にある分析対象を用いた分析になっている。このことから当該結果が生じた可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27、28年度において、DCGE-OLG model (Dynamic computable general-equilibrium overlapping-generations model) を用いた、日本経済と政府財政の今後に関するシミュレーション分析と、Bohn(1998)の方法により、日本の政令指定都市財政と中核市財政の持続可能性テストを実施できたことは大きな収穫である。しかし、その一方で、産業毎の効率性評価に関する研究を予定どおり前進させることができなかった。そして、以上の成果を総合的に判断した結果、現在までの達成度については上記のとおり判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、次の分析を進めていく。1) 産業毎の効率性評価に関する分析。ならびに、2) 平成27、28年度に実施した、日本経済と政府財政の現状と今後を評価する分析と、政府の(過去から現在に至る)財政運営姿勢を検証する分析をそれぞれ発展させた分析。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者は、当該補助事業申請時には予定されていなかった、所属研究機関(大学)の在外研究派遣事業により、平成28年3月1日から8月31日の間、日本を不在にし在外研究に携わっていた。そのため、当該補助事業の進捗が通常年度に比べ(数か月分)遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究代表者は、平成29年度において、平成28年度に予定していた分析を完成させ、論文原稿を執筆する予定である。そのため、次年度への繰越額は、主に、論文原稿の英文翻訳・校正費用(人件費・謝金)と分析実施時に必要となる物品の購入(物品費)に充てる予定である。
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