平成27年度の研究成果は、以下の通りである。(1)「政治家が表明する通商政策関する意見や公約に、地元選挙区の利害、自らの思想・信念、選挙制度がどのような影響を与えているのだろうか?」というテーマについて、新たに、各候補者は自らの選挙区の有権者の意見を踏まえた意見表明を行ったのかということについても確認するため、有権者のTPPに対する意見の決定要因についても分析を行った。(2) 現在公開されているJGSS2008が、国という視点と個々人の雇用という視点から見た貿易(経済のグローバル化)に対する人々の意見を調査していることを活用し、雇用という観点にたった個人の貿易に対する選好の決定要因を分析するとともに、この選好を踏まえた上で、一国(日本)という観点にたった個人の貿易に対する選好の決定要因についても分析を行った。
研究期間全体を通して実施した研究の成果は、以下の通りである。(i)国政選挙での勝利を目指す候補者の自由貿易協定に対する選挙公約が、地元選挙区の経済的利害、政治家自身のイデオロギー、選挙制度によってどのような影響を受けるのかを分析する理論モデルを構築した。また、実証分析では、国政選挙の候補者のTPPに対する意見、および有権者のTPPに対する意見の決定要因の分析を行い、理論結果が実証的に支持されるかを確かめた。これらの分析をまとめた論文、“Do candidates listen to voter opinions on a free trade agreement?: The case of Japan joining the Trans-Pacific Partnership negotiations”は、再修正が終了次第、海外学術雑誌に投稿する予定である。(ii) 国際貿易に対する日本国民の意見・選好形成の決定要因について実証分析を行った結果をまとめた論文、“Who is more protectionist than others in Japan?”も、寄せられたコメントなどを基にさらなる修正を行い、海外学術雑誌に投稿するつもりである。
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