経済統合に関して金融資産面を重視した研究を行った。ユーロ導入国では,統一通貨導入の条件を満たすために構造変化が生じ,その中で経常収支均衡が犠牲にされたことを,実証分析によって示れた。この考察はユーロ導入の複数国で,国際収支問題が発生した要因の一つを示したものとして評価できる。また国家間の資産移動を分析するモデルを構築する中で,これまでの研究では示されていない貨幣の非中立性が成立する新たなメカニズムを明らかにした。金融政策および財政政策の有効性の有無は貨幣の非中立性に依存するが,EU主要国と日本,アメリカ,カナダ,オーストラリアを加えた8カ国のデータによる実証分析も行い良好な結果を得ている。
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