研究課題/領域番号 |
25380313
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研究機関 | 下関市立大学 |
研究代表者 |
佐藤 隆 下関市立大学, 経済学部, 准教授 (90235359)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | オープンソース・ソフトウェア / 規模に関する収穫逓増 / 知的財産権 / スイッチング・コスト / ネットワーク外部性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、プログラムのソースコードを公開し、そのコピー・改変・再配布を自由に認めるオープンソース・ソフトウェア(OSS)戦略(例えばオペレーティング・システム(OS)のLinux)と、それを非公開として企業で専有する戦略(例えばOSのWindows)とを比較して、前者が後者よりも有利になる(普及する)のはどのような条件を満たしているときなのかを調べることである。またそれに基づいて新たな(従来の独占禁止法とは異なった)競争政策をどのように構築・展開していったらよいのかを考察を行うことである。 Microsoft社の商業的なOSであるWindowsについては、従来、様々な理由により独占的な地位を占めてきた。規模に関する収穫逓増、知的財産権の役割(OSのインターフェイスの非公開)、スイッチング・コスト、ネットワーク外部性などである。これらの要因は、Microsoft社のWindowsを強力な独占的な地位に押し上げてきた。それに対してWindowsを常に脅かすような新規参入者(新たなOS)があれば、たとえ独占であったとしてもパフォーマンスが必ずしも低下するとは限らず、OSS戦略に期待が高まってきたのはそのためである。 本研究では、実際に両者が併存するモデルを作成し、どちらが生き残るかシミュレーションが行われたが、先の条件群の中では、一般のユーザーの場合は、新たなOSに切り替えるスイッチング・コストがかなり高く、またOSSのメリット(ソースコードをコピー・改変・再配布を自由に認めること)があまり感じられないことからWindowsからLinuxに切り替えるのはかなり困難であることが判明した。したがって、OSSの普及を促すためには、政府からスイッチング・コストの分だけ補助金を提供するか、もしくは、OSSのメリットが感じられるようにコンピューター・プログラムの教育をいかに促進するかが重要であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
農林水産省技術会議による共同研究(食糧生産地域再生のための先端技術展開事業「サケ科魚類養殖業の安定化、省コスト・効率化のための実証研究」、平成25年度~27年度)に深くかかわったため、科研費による本研究が思うように進まなかった。しかし農水省技術会議による研究が昨年度で終了した。科研費による本研究に集中する環境が整ったので、1年間の延長の申請を行い、それが認められた。今年度研究期間中に今までの遅れを取り戻すとともに、国内外での発表を含めてより精緻な研究成果を上げたいと思っている。
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今後の研究の推進方策 |
オープンソース・ソフトウェア(OSS)戦略にとっての最大の課題は、一般のユーザ―の獲得をいかにして行うかである。なぜなら、OSSのオペレーティング・システム(Linuxなど)のユーザー数がかなり増えないことには、そのためのアプリケーション・ソフトウェアも増えないからである。いわゆる双方向市場への検討を行うことが重要となる。そのためには、OSSによるアプリケーション・ソフトウェアの開発を行うプログラマーのコミュニティに働きかけて開発を促すとともに(例えば、政府からOSSプログラマーへの支援金の提供)、商用のLinuxパッケージの価格をスイッチング・コストや一般ユーザーの訓練費用を凌ぐほどの低価格で販売を行うなどの総合的な戦略を考案したい。どのような政策手段を講じれば、WindowsからLinuxに切り替わるのかを、進化的な動学シミュレーションモデルを構築・精緻化して調べていきたい。またOSSの知的財産権にかかわる考察も併せて行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の1年間延長を申請する関係で、次年度使用額をいくらか残した。
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次年度使用額の使用計画 |
旅費に使用する見込みである。
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