本研究を通して、グリーン経済のもとで、ファンダメンタルな成長要因(経済制度、社会関係資本)の違いによって、(経済成長と汚染削減の)環境イノベーションの政策効果を分析した。特に、神戸大学の中村保教授と九州大学の池下研一郎准教授との共同研究では、地球環境と内生的経済成長に関する画期的な論文であるAcemoglu et al.(2012)を詳細に検討し、数理的な議論の拡張を行った。制限的な強い仮定に依拠しない一般的な形で理論展開し、さらにダイナミックスに関する議論の拡張を行い、その成果を国際ジャーナルに投稿し、掲載された。また、ファンダメンタルな成長要因として社会関係資本を考える場合、伝統的な経済学の分析の枠を超えて、議論することが要請される。A.K.セン等の考えを再検討し、概念の整理と思考の枠組みを拡張する試みを行った。今年度の研究実績の概要は次の通りである。 (1)インクルーシブなグリーン経済成長の議論に社会関係資本の要素を含めるために、概念の整理を行い、冊子「グリーン経済成長と持続可能性」を作成し、研究者に配布した。また、この結果の骨子は韓国での国際学会で報告した。 (2)九州大学の池下研一郎准教授との共同研究で、最近のデジタル技術に関するイノベーションを議論可能にするために、組み合わせイノベーション関連の論文を検討し、グリーン経済のもとで議論し、九州経済学会にて、論文「デジタル技術の進展と内生的経済成長」を報告した。 (3)グリーン経済のモデルの厳密な数理的展開の必要性のため、数理に関する冊子「数理分析の基礎」(161ページ)をまとめ、研究者に配布した。
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