研究課題/領域番号 |
25380316
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 流通経済大学 |
研究代表者 |
横井 のり枝 流通経済大学, 流通情報学部, 講師 (40615928)
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研究分担者 |
乾 友彦 日本大学, 経済学部, 教授 (10328669)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際貿易 / 国際流通 / 国際経済 |
研究概要 |
本研究は、貿易の継続性における要因のひとつとして流通業がいかに重要であるかの把握、およびその効果をリサーチおよび実証分析により明らかにすることを目的としている。 研究初年度である本年度は現地ヒアリング調査を行い、実態把握につとめた。対象市場は、ベトナムである。ベトナムはアジアの中でも経済成長が著しい市場のひとつである。人口は増加傾向にあり、平均年齢は日本や中国などに比して低く、若年ほど人口が多いというピラミッド型の人口構成となっている。彼ら消費者の購買意欲も高いとされ、海外企業による参入も増加している。このベトナム市場にはすでに日系製造業および流通業が進出しており、今後も日系企業の進出が見込まれることから、調査対象市場とした。 日系製造業、日系卸売業、日系商社、日系小売業および日系金融機関にヒアリング調査を行った。そこで、まず対象企業の市場参入経緯、参入方式、現地企業との提携・連携、現地ビジネスにおけるネットワーク形成などを把握した。次に、輸出事業と現地生産事業における事業継続性の差、現地市場における情報収集方法、そして流通業の貢献度の実態について知見を得た。その一方で、貿易における障壁、現地における事業継続、ネットワークの貢献にかかる課題も多く提示された。これには、既存研究や調査においては把握しきれなかった内容も多く、今後仮説をたて分析を行うには、現状の把握は欠かせないことから、このヒアリング調査結果は今後の研究の基盤とすることができたと考える。 これら結果をもとに、次年度においては「効果」の検証と「課題」に対するアプローチの両面に取り組み、新規参入企業や既参入企業の継続における流通業の重要性について、解明していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、上記「研究実績の概要」にも記したように、貿易の継続性における要因のひとつとして流通業がいかに重要であるかの把握、およびその効果をリサーチおよび実証分析により明らかにすることを目的としている。 この目的に沿って、共同で研究会を開催し、個別研究に関する意見交換を行った。実証分析については本年度実施しなかったが、この点については議論を重ね、また日本国内での事前ヒアリング調査を行う中で検討した。その結果、現地市場ヒアリング調査と実証分析を並行するよりも、現状把握を先んじるほうが今後の研究計画上も有効であるとの結論から、現地ヒアリング調査を実施し、新たな課題についても整理して共同研究者間の共通理解を図ることができた。新たな課題を先に共有できたことにより、実証分析を何度も繰り返すことなく実施できることから、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、ベトナム市場よりも日系企業参入が進み、よりネットワーク構築が進展しているタイ市場、中国市場でのヒアリング調査を行い、先に調査を行ったベトナム市場での現状が、ベトナム市場特有の理由であるのか、市場成熟度(ネットワーク構築進展度)の相違によるものなのかの確認をする。また、製造業が流通業から提供される情報がどの程度役にたっているのか、既存の取引制度の汎用性がパートナーを見つけるサーチコスト削減にいかに役にたっているのかなどをヒアリング調査により明らかにする。 そして、日系流通業に比して海外市場参入が先行している欧米流通業の現状についても整理する。これにより、欧米を中心とした流通業一般と日系流通業による成果や課題の差異を抽出する。その上で日系流通業のネットワーク構築と効果、課題についてより明確化していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本来、研究初年度に大規模な海外市場ヒアリング調査を行い、次年度以降にその結果をもとに進展させていく計画であった。しかし、研究初年度である本年度に、日本国内での事前ヒアリング調査を行った中で、既存研究および既存調査では明らかにされてこなかった現状を確認した。それをもとに検討を重ね、まず現地市場ヒアリング調査を実施し、既存研究および調査結果の乖離を整理することが最重要であるとの結論に達した。 このため、第1回目の現地ヒアリング調査を今年度行い、結果について十分な精査を行った上で、次年度にさらなるヒアリング調査を積み重ねることが有効であると判断した。同様に、ヒアリング調査と実証分析を並行するよりも、ヒアリング調査を受けて現実に即した仮説をもとにした分析を行うことが適切との判断から、結果として初年度に使用する額が想定よりも少額となった。 上記「次年度使用額が生じた理由」から、未使用金額については本年度に行う予定であった第2回ヒアリング調査および実証分析に使用する。また次年度使用金額については、次年度研究予定のタイ市場におけるヒアリング調査に使用する。また、本年度の研究において明確化すべきと確認した、日系流通業に比して海外市場参入が先行している欧米流通業の現状について整理するためのヒアリング調査も行う。
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