本研究は、貿易の継続性における要因のひとつとして流通業がいかに重要であるかの把握、およびその効果をリサーチおよび実証分析により明らかにすることを目的としている。 研究最終年度となる本年度は、過去二年度の研究過程で提示された課題を精査し、またこれまでに得られた研究成果をまとめた。研究初年度は、ベトナム市場での現地ヒアリング調査により、日本流通業の現地市場進出および展開による日本製造業ビジネスへの貢献度の実態について知見を得るとともに、現地における事業継続およびネットワーク構築にかかる課題も多く提示された。上記から、次年度には、日本流通業の海外市場進出動向と継続可能な条件について実証分析を行った。その結果、上場企業、自国市場から近距離、早期参入することが統計的に有意となる結果を得た。さらに、銀行の貢献度に課題も出されたことから実証分析を行った結果、銀行が蓄積した情報はその取引企業、とくに中小企業の輸出開始や継続に重要な役割を与えることが判明した。 そして本年度は、まず台湾市場での現地ヒアリング調査を行った。台湾企業は、自らの海外市場進出に加えて、海外企業の中華圏市場進出サポートを行っている。中華系民族ネットワークを有する優位性のみならず、留学生の積極的受け入れによる新たなネットワーク構築などの取り組みを行っているなどの知見を得た。また、前年度までの研究結果をふまえた上でのヒアリング調査から、輸出の継続には流通網の確立に加えて、マーケティング情報の蓄積や商品の差別化が重要な役割を果たすことが明らかになった。 本研究により、貿易の継続性における流通業の重要性、かつ流通業の海外進出および継続可能な条件を明らかにすることができた。さらに、研究過程で得た知見から銀行の重要性も明らかにすることができた。既存研究にないこれら分析結果が得られたことは、本研究の成果である。
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