研究課題/領域番号 |
25380317
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研究機関 | 跡見学園女子大学 |
研究代表者 |
丹野 忠晋 跡見学園女子大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (40282933)
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研究分担者 |
山田 玲良 札幌大学, 公私立大学の部局等, 教授 (50364203)
櫻井 秀彦 北海道薬科大学, 薬学部, 教授 (70326560)
林 行成 広島国際大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90389122)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 医療用医薬品 / 垂直的取引制限 / 流通 / 卸 / 薬価制度 |
研究実績の概要 |
「医療用医薬品流通の経済分析」の理論分析では医薬品卸企業と医療機関の交渉力の違いによって製薬メーカーの利潤が異なることを示した.垂直的取引制限の理論の通常の結果と異なり卸の交渉力が高いほど製薬メーカーの利潤は高くなる.その結論のカギは薬価改定である.医薬品流通の取引慣行に薬価制度が大きな影響があることを含意している.この結果は丹野・林 (2015)に掲載された.この結論は,垂直的取引やその慣行を解明のためには規制の枠組みを含めた視野が必要であることも理論的に示している.医療だけでなくこの分野の理論分析にとっても新しい視点を導入した結論と言えるだろう. 実証パートは,病院と薬局に関して詳細な医薬品調達のデータを入手して,卸との取引実態や情報提供機能を調べた.単品単価取引や総価取引と医療機関や卸の属性との関連を調べた結果,医療機関の規模や取引のある卸の数などの基本的な競争要因が取引形態に有意に影響を与えていることを明らかにした.大きな医療機関は総価取引への誘因を高めるこの結果は,直感に合致している.その政策的な含意としては取引の透明性と規模の拡大による病院経営の健全化には一種のトレードオフの関係にあると言える.また,後発医薬品の採用は単品単価取引を促進する.この結論は,後発医薬品の取引拡大によって,将来総価取引から単品単価取引が増えるものと予想できる.本研究は,日本の医薬品流通の本格的な実証分析として貴重な第一歩を記す研究と考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「医療用医薬品流通の経済分析」は計画通り進展している.現在査読誌に一本論文が掲載されたが,後続の論文も既に用意されている.実証パートに関しては2014年度は3回学会で報告がなされた.本格的な医療用医薬品の流通の実証分析は日本においてほとんどなされていない現状を鑑みると,論文の作成に時間が掛っていることは,その新規性のため致し方ないと判断している.理論パートの研究が計画以上に進展しているため理論から実証への仮説の提供が上手く行っている.そして,その相乗効果より様々な含意が得られたと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
理論パートは,丹野・林 (2015)の交渉力が極端に偏っているケースから,さらに一般化しそれが連続的に変化する場合に製薬メーカーの利潤はどうなるかを検討していく.また経済厚生の比較や割引因子を導入して期間別の利潤の軽重が及ぼす影響にも分析を進めていく.この研究については英文で執筆して海外の学会での発表や英文ジャーナルの掲載を計画している. 実証パートでは過去の研究成果を一本の論文にまとめて,レフェリージャーナルへの投稿を行う.また,第2回目のデータの入手に関しては医薬品価格データを重視して行った.そのデータの整理の後に,実際の取引慣行と価格の相関関係はどうなっているかを中心に研究する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
新たにアンケート調査を実施したため研究費の使用額が増えたため.
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次年度使用額の使用計画 |
このデータの分析のための整理やその分析を今後行っていく.
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