本研究では、都道府県別月次GDPを推計し、それを応用した研究を行った。県民経済計算の公表が遅いため、より早く都道府県別の経済動向をつかむために開発した。都道府県別GDPは内閣府の発表する地域別総合支出指数(RDEI)に、政府最終消費支出と純輸出・純移出を加える形で推計した。政府最終消費支出は、都道府県別の人件費、物件費、維持補修費や医療費を元データとして、パネル推計した。純輸出・純移出は、内需や全国ベースの鉱工業生産指数をもとに計算した。 都道府県別月次GDPを使って、東日本大震災の被災3県の復興状況を調べた。震災が起きなかった場合のGDPをほかの都道府県のデータを使って推計し、どの程度生産が落ち込み、復興需要が発生したかを推計した。その成果は国際学会で発表し、ジャーナルに掲載された。さらに、2016年3月11日の日本経済新聞朝刊に、東北6県の復興状況を示すデータとしても掲載された。 また、都道府県別月次GDPを使った景気指標も作成した。各都道府県の月次GDPにバンドパスフィルターを施して景気成分を抽出し、景気循環を取り出した。そのデータをマルコフスイッチングモデルで推計し、景気の山谷を推計した。また、空間経済学の知見を用い、ウエート行列を使った推計を行い、隣接地域との景気の相関度合を測った。これらの研究成果は、国際学会や国内の学会で発表した。 今後の課題は、都道府県別月次GDPの精度を上げることである。県民経済計算と比べてどの程度の誤差があるかを測り、誤差を少なくする努力が必要となる。景気分析ではほかの手法を用いた場合と結果を比べてその共通点、相違点をはっきりさせる必要がある。
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