研究課題/領域番号 |
25380319
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研究機関 | 東京国際大学 |
研究代表者 |
松村 敦子 東京国際大学, 経済学部, 教授 (60209608)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 環境物品貿易 / 地域貿易協定 / 貿易自由化効果 / 計量分析 / グラヴィティ・モデル / 関税率 / 生産フラグメンテーション / 再生可能エネルギー関連財 |
研究実績の概要 |
2015年度は科学研究費研究の3年目であり、1年目と2年目に行った「アジア太平洋地域の環境物品の貿易」における「貿易構造」分析に関する研究をジャーナルに投稿するとともに、本科研費研究の次の段階として「貿易自由化効果」の研究を進めた。 これまでの研究のジャーナルへの投稿については、権威あるジャーナルににアクセプトされ大きな成果をあげることができた。Journal of Economic Integration,2016年3月号,1-40 に”Regional Trade Integration by Environmental Goods”として掲載されている。ジャーナルに掲載されるに当たりエディターからのコメントによって研究内容をさらに深めることができた。 2015年度に新た進めた研究については「環境物品の貿易自由化効果」に焦点を当てた分析に取り組んだ。貿易自由化の効果については、関税引下げ効果として捉えることが適切であり、個別の環境物品を取り上げて関税の効果分析を行っていていくこととした。今回の研究では、環境物品の中でも再生可能エネルギー分野での代表的環境物品である太陽電池を取り上げ、グラヴィティ・モデルに関税率を導入したパネル分析を行った。2種類のパネル分析結果では、2000年代前半の時期において関税率の引下げによる太陽電池の世界貿易拡大効果が明らかとなった。その結果APECやWTOが推進している環境物品の貿易自由化政策がもたらす貿易拡大効果と環境良化の可能性について確認することができた。この研究の成果については、2015年11月に開催された日本国際経済学会74回全国大会(専修大学)にて報告し、様々な研究者のコメントをもとに論文に仕上げ、これが東京国際大学論叢にアクセプトされ、2016年3月号に掲載された。こうした政策効果について確認するために、太陽電池のみならず、風力発電機のような他の再生可能エネルギー関連財の分析を行うことが必要であり現在進めている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の進捗状況としては、順調に進展していると考えている。その理由として、研究課題である「アジア太平洋地域の環境物品の貿易構造と貿易自由化効果の実証分析」の前半段階である「貿易構造」の分析については、上述の通り権威あるジャーナルに掲載されるという大きな成果を上げることができ、科研費研究の前半部分、つまり環境物品貿易構造をアジア太平洋地域に焦点を当てて研究することの重要性が認められたと言える。 後半の「貿易自由化効果」の分析については、関税引下げ効果の実証研究を太陽電池を対象とした分析から始め、関税引下げの貿易拡大効果が明らかにできた。今後は対象財を拡大して研究を進める。 こうした学術研究を進めていく上で当初予期していないことが起こった場合には、即座に様々な分析手法を探り必要なデータを収集することによる代替的研究方法を考案することで対処し、テーマに沿った学術研究をしっかりと進めて成果をあげる所存である。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず、本科研費研究の後半の部分として「アジア太平洋地域における環境物品の貿易自由化効果」の実証分析について、関税引下げ効果に焦点当てたグラヴィティ・モデルによる分析を進める。現在は、関税引下げの貿易拡大に対する効果の実証研究を、昨年度に行った太陽電池を対象とした分析から他の再生可能エネルギー関連財を対象とした分析に拡大していく準備を進めている。 また、様々な要因によって環境物品貿易が拡大していくことを明らかにしてきたが、こうした貿易拡大が実際に環境良化効果をもたらしているのかについて検証していく。これに関しては、中国のようなアジア太平洋地域の重要国をはじめとして、いくつかの国を対象とした適切な手法に基づく分析が必要となる。 さらに、本研究のテーマである「環境物品貿易自由化」の重要性について、WTOやAPECの議論を踏まえて整理し、WTOとAPECが足並みを揃えて世界レベルでさまざまな環境物品貿易自由化を行っていくことがどのような点で有意義なのかについて論じていきたい。その成果を夏にオックスフォードで開催される国際円卓会議で報告することが決定しており、世界の学者たちと議論を交わして研究の方向性に生かしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度未使用額が生じた理由は、学会等が関東地区で実施されたために宿泊付き出張を行わなかったことと、データ配信購入が予定より少なくなったことである。
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次年度使用額の使用計画 |
今後の使用計画については、データ配信や研究助言などに重点的に使用する計画である。
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