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2014 年度 実施状況報告書

主観的な公平感が労働意欲に与える影響は、男女間でどのように異なるのか

研究課題

研究課題/領域番号 25380320
研究機関青山学院大学

研究代表者

友原 章典  青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (80448810)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード労働意欲
研究実績の概要

多国籍企業誘致の是非については、重要な政策課題として様々な論点から議論がなされている。当該研究は、発展途上国における労働力の形成という視点から、多国籍企業による洗練された労務管理と労働意欲の問題に焦点を絞り、金銭的な誘因だけではなく、非金銭的な要因が、労働誘因に与える影響を研究している。特に、労働誘因のモデルにおいて、いくつかの非金銭的な要因を比べて、それぞれの要因の相対的な重要性を調べることにより、より適切なモデルを特定しようとしている。分析にあたっては、東南アジアで活動を行う多国籍企業の労務管理戦略と労働者の勤労意識に関する個票データを用い、ラボ実験とは異なった現実の労働市場における労使関係の在り方を明らかにした。分析では、仕事に対するやる気や努力のような正の態度と怠惰やさぼりのような負の態度を区別している。分析の結果、努力に関しては、相互性や公平などのように他の人がある人の行動にどのような影響を与えるかを扱う社会選考アプローチ(the social preference approach)より、プライドや恥などの自己的な動機を扱う社会尊敬アプローチ(the social esteem approach)のほうがより適切であることが示されている。公平などの目に見えない他の要因と比べて、社会評価や職業訓練のような目に見える要因の方が、やる気とおおいにかかわっていることがわかった。一方、さぼりに関しては、両方のアプローチとも同じくらい重要であることが示された。また、こうした結果には性差(男女間の差異)がなく、男女ともにあてはまることも示された。
当該研究は、既存研究で一般的であった雇用創出や賃金への影響ではなく、発展途上国における労働力の形成という新たな視点を導入し、将来の産業・開発政策をめぐる議論に有用な示唆を与えるものと考える。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

データの入力、整理に関しては、当初数名を予定したRA学生が1名しか確保できなかったことやRA学生の学業との兼ね合い、データ入力に誤りを発見し、その修正を行うなど予想以上に作業に時間を要したため、当初の予定より遅れたが、十分な時系列データがそろわない国は、分析から外すなどの工夫をして、プロジェクトの終了に向けて研究分析をいそいでいるところである。

今後の研究の推進方策

アンケートを使用した主観的な価値判断のデータ分析は、当該分野でも必ずしも一般的なアプローチではなく、統計分析のやり方においてもいろいろな意見がある。当該プロジェクトの分析における暫定的な分析に対しても、海外のジャーナルの査読段階において、心理学などの他の分野で使用されている分析手法は、因果関係が明白ではなくspuriousな結果を生むとのコメントが多く、分析手法の改良並びに質的なデータだけでなく、経済学で一般的である量的なデータの使用を合わせて行うなどの試みを行っている最中である。このため、GDPや失業等の典型的なマクロ変数に加え、海外直接投資や移民などの外部環境が与える影響も導入し、現在のアンケート結果である個票データと組みあわせて分析する方向で分析を進める予定である。

次年度使用額が生じた理由

上述の通り、データの入力、整理に予定以上に時間を要し、海外における追加調査実施及び学会での成果発表の取りやめをしたため、旅費や調査にかかる支出がなくなったため。

次年度使用額の使用計画

新たに使用する予定であるデータの入力、整理やデータ分析補助のためにRA費用として使用する。アンケート調査の分析に使用していたSPSSではなく、量的データを合わせて分析するため、今年からバージョンのアップしたSTATAソフトを購入する。また、研究の進捗状況に応じて、外部経済環境のデータをIMDから購入する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)

  • [雑誌論文] Non-pecuniary Factors in Work Incentive Models: Social Preference and Social Esteem Approaches2015

    • 著者名/発表者名
      Akinori Tomohara, Akihiko Ohno
    • 雑誌名

      British Journal of Economics, Management & Trade

      巻: 5(1) ページ: 1-13

    • DOI

      10.9734/BJEMT/2015/13117#sthash.E4nsDDU3.dpuf

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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