研究実績の概要 |
これまでに, 市場支配力を計測しそれを要因に分解するモデルを研究してきた. このモデルは主に電力取引市場を対象としている. このモデルにおいては, 需要量の不確実変動を想定し, 複数の供給者が将来の利潤の確率分布を考慮しながら, 各自の戦略(市場へ提示する供給曲線)を決定する. この非協力ゲームにおいて, Nash均衡を導出し. さらに, そのNash均衡における価格を求め, このモデルを基礎とする市場支配力の計測方法についても開発した. この成果をまとめて, 中央大学経済研究所ディスカッション・ペーパー226 "An Oligopoly Model for Market Performance Analysis With an Application to Electricity Market"とした. この研究において開発した市場支配力の計測方法を実際の卸電力取引市場に適用しその市場支配力を分析した. 37th IAEE International Conferenceや14th IAEE European Energy Conferenceにおいて, この分析例を報告した. 既存の研究成果であるTezuka, Ishii and Ishizaka(2012)を基にSpot Freight RateとFFAへ適用し, 市場参加者たちのリスクへの態度を計測した. そして, ある期間については, 市場参加者たちのリスクへの態度は複数の商品先物に依存していることが発見された. この研究内容を2014 IAMEで報告した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
"An Oligopoly Model for Market Performance Analysis with an Application to Electricity Market"について, 改訂作業を行った. この改訂作業においては, 全体の構成および各節の構成から見直した. その結果, 第1節については大幅な改定を行なった. IAEEおよびIAMEの報告では, 複数の時系列データを扱った. そのため, 分析前のデータセットを作成することに予想していたより多くの時間を費やしてしまった. また, IAEEに関連する研究に関して, 日本卸電力取引所(Japan Electric Power Exchange; JEPX)のデータを季節毎に分析することより, 市場の集中度と市場参加者のリスクへの態度がマークアップへ与える影響が明確になった. このため, 当初予定していなかった分析をPJM市場(The Pennsylvania, New Jersey and Maryland market)に対しても行なうこととした. このための準備及び分析に追加的な時間を要することとなった. 電力やガス等は貯蔵不可能であると同時に, その供給にはネットワークが必要である. 2014年度には, このネットワーク上で供給されることを反映したモデルに関するアイデアを得た. そして, このモデルを構築することに時間を要した(現在も継続中である). この研究の計画段階では, このようなモデルの構築を予定していなかった.
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今後の研究の推進方策 |
優先度も含めて, 今年度の課題として次の3点を予定している. (1)2014 IAME, 37th IAEE, 14th IAEE European Energy Conferenceで報告した内容等について, 報告時のコメント等を参考とし, 必要分析を加え, 論文としてまとめて, 国際的な学術雑誌へ投稿する. (2)供給においてネットワークを必要とする財の市場を分析するためのモデルについての考察をすすめる. そして, この研究について, 33rd USAEE/IAEE North American Conference等で報告する予定である. (3)これまでに研究を進めてきた非協力ゲームの枠組みの貯蔵不可能な財の価格評価モデルをさらに拡張する予定である. これらの研究にあたり, 山内弘隆先生(一橋大学), 鳥居昭夫先生(中央大学), 竹中康治先生(日本大学), 松川勇先生(武蔵大学), 服部徹先生(電力中央研究所), エネルギー関連企業の実務の方々等からアドバイスを頂く予定である. さらに, 一部の研究については, 手塚広一郎先生(日本大学), 石坂元一先生(福岡大学), 橋本悟先生(帝京大学)との共同研究という形で進めていく予定である.
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