研究課題/領域番号 |
25380323
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
石井 昌宏 上智大学, 経済学部, 教授 (90323881)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 貯蔵不可能な財 / 不確実性 / リスクプレミアム / 市場支配力 / 非協力ゲーム |
研究実績の概要 |
本研究課題において, 分析対象の中心は貯蔵不可能な財が取引されている市場である. 2014年度まではその代表例でもある電力取引市場を特に研究してきた. 2015年度については, これまでの研究で得られたモデルへ若干の変更を施し, その適用範囲をShipping Freight Rateの分析や港湾間競争に適用することを試みた. さらに, 2014年度に引き続いて, 供給においてネットワークを必要とする財の市場を分析するためのモデルについても研究を進めた. Shipping Freight Rateの分析に関わる成果については2015 IAMEにおいて報告した. 港湾間競争に関する既存の諸研究とそれを基にした考察結果をまとめた論文が"Dynamic Shipping and Port Development in the Globalized Economy, Volume 1: Applying Theory and Practice in Maritime Logistics"の第5章として掲載された. 既存の港湾間競争を表現するモデルへ新たに分析を追加した成果を2015 SUBA-ALRTにおいて報告した. 供給においてネットワークを必要とする財の市場(特にガスを対象とする)に関わる研究成果を33rd USAEE/IAEE North American Conferenceにおいて報告した. これらの他に, 本研究と関連する既存の研究成果(モデル)を適用して, Shipping Freight RateとForward Freight Agreementの関係についてのデータ分析を行なった. その結果を論文としてまとめ, 国際的な学術雑誌へ投稿した. この論文については現在査読中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
やや遅れが生じている理由は次の3点にある. (1)これまでの研究の中心に位置づけていた「市場支配力を計測しそれを要因に分解するモデル」を拡張を試みている. 具体的には次の通りである. 各供給者の供給量制約を表現するため, fractional linear functionをその限界費用関数として用いることを試みている. このとき, n社が財の供給をしている場合のNash均衡の導出に過程おける場合分けが複雑である. このため, ここに予想以上に時間を要している. (2)2014年度に引き続いて研究している「供給においてネットワークを必要とする財の市場を分析するためのモデル」について, 独占の場合, 供給のみ行なう企業とネットワーク保有企業が供給も行なう場合(新規参入企業と垂直分離されていない既存企業の場合), 垂直分離された場合の研究を進めた. この分析についても予想以上に時間を要した. (3)2014年度の実施報告書でも触れたが, ネットワーク上で供給される財を表現するモデルは当初の研究計画段階では予定していなかった. しかし, この研究成果についても国際学会での発表および論文投稿を現在では予定している. そのための準備等に追加的な時間を要している.
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今後の研究の推進方策 |
現在の興味の中心及び優先度も考慮して, 2016年度の課題として次の3点を予定している. (1)33rd USAEE/IAEE North American Conferenceにおいて報告した内容に対して, 報告時のコメント等を踏まえ, エネルギー経済政策への応用と深く関連する分析を加え, 論文としてまとめて, 国際的な学術雑誌へ投稿する. (2)これまでも研究の中心に位置づけていた「市場支配力を計測しそれを要因に分解するモデル」の拡張を継続的に行なう予定である. (3)Shipping Freight RateとForward Freight Agreementの関係についての分析の枠組みの拡張し, 市場参加者たちのリスクへの態度の変化が市場価格の変化へ与える影響をより詳しく分析することを予定している. この研究成果を2016 OBOR等で発表する予定である. これらの研究においては, 手塚広一郎先生(日本大学), 石坂元一先生(福岡大学), 橋本悟先生(帝京大学)との共同研究という形式で適宜進める予定である. また, これらの研究を進めるにあたり, 山内弘隆先生(一橋大学), 鳥居昭夫先生(中央大学), 竹中康治先生(日本大学), および関連分野の実務の方々等からアドバイスをいただくことも考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は次の2点です. (1)2015年度に投稿論文作成に遅れが生じました. そのため, その投稿に関わる費用が発生しませんでした. (2)現在使用しているNote PCが劣化してきたため, 新たにNote PCを購入する予定でした. しかし, スペックと価格の兼ね合いから2015年度の購入を見送りました.
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度遅れが生じた投稿論文については2016年度中に完成し, 投稿する予定です. また, Note PCについても購入する予定です.
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