研究課題/領域番号 |
25380326
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
中西 泰夫 専修大学, 経済学部, 教授 (40258182)
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研究分担者 |
岡村 誠 広島大学, 社会(科)学研究科, 教授 (30177084)
山田 節夫 専修大学, 経済学部, 教授 (70220382)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 研究開発 / 特許 / スピルオーバー / 吸収力仮説 / 経済成長 / パネルデータ / 内生的成長論 / 寡占市場 |
研究概要 |
本研究は、研究開発のスピルオーバーに関して、吸収力仮説を考慮して分析することを目的としているが、平成25年度はその理論、実証分析でイノベーションと経済成長との関連を調べることにある。そうした点から平成25年度は、研究開発とイノベーションに関する実証分析とイノベーションと経済成長に関する分析、政府の政策に関する基礎についての研究成果が得られた。 1,分析の第一として、研究開発、イノベーションとスピルオーバーに関する実証分析がおこなわれた。 第一は、中西(2012)、(2013)がその研究成果である。研究開発のスピルオーバーに関する実証分析をおこなった。スピルオーバーに関して、産業内と産業間の2種類のスピルオーバーを考えることが可能になった。企業の企業価値および付加価値にプラスの貢献をすることが確認された。 第二に、Yamada, Inoue (2013)では、特許のデータを使用して、特許の審査請求制度に関する分析をおこなった。企業の審査請求行動を、一種のリアルオプションととらえて、実際のデータを使用した。統計的な推定から得られたパラメータから、企業の審査請求行動が過剰になっていることを示している。 2,分析の第2として研究開発および特許と経済成長に関しての分析と政府の政策に関する基礎的な分析をおこなった。ここでの分析は、第一に中西(2013)にあり、一般技術資本をつくる部門と通常の財をつくる部門の2部門の一般均衡モデルが構築されITに代表される技術の分析になっている。さらに近年の部門間賃金格差が説明されている。また第二にOkamura et. al (2013)では、政府の政策の基礎的な分析をおこなった。そこでは政府の税率の関して一種の租税競争が行われており、それを繰り返しゲームでモデル化すると、ある種の協調行動が発生し社会的に望ましい状況になるという分析である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究は、研究開発のスピルオーバーに関する分析を吸収力仮説を考慮して分析することと経済成長との関係を調べることであった。詳しくは、1,研究開発のスピルオーバーの吸収力仮説のサーベイ、2,実証分析のためのデータ整備、3,理論、実証分析用のモデルの構築、4.データを使って統計的な分析をおこなうことであった。 (1)研究開発のスピルオーバーの吸収力仮説のサーベイに関しては、寡占市場の分析を中心にした研究開発スピルオーバーのモデル、動学的な分析を含んだ特許を使ったモデルさらに一般均衡的な経済成長に関するモデルの先行研究の整理をおこなって、今後の分析の基礎とした。(2)実証分析のためのデータ整備については、電気機械、精密機械、輸送用機械、医薬、化学のいわゆるハイテクな財を製造している5産業に関して実証分析のデータの開発と整理をおこなった。(3)理論、実証分析用のモデルの構築については、一般技術資本をつくる部門と通常の財をつくる部門の2部門の一般均衡モデルが構築されている。したがってITに代表されるどの産業の財にも含まれている技術の分析になっている。この結果そうした趣旨のモデルの成立が確認された。さらに補助金政策の有効性に関しても分析がなされ、また年の部門間賃金格差が説明されている。(4)データを使って統計的な分析をおこなうことについては、産業内と産業間の2種類のスピルオーバーを考えスピルオーバーは企業の企業価値および付加価値にプラスの貢献をすることが確認された。また特許の申請に関する実証分析もおこった。そして特許の登録申請が過剰であることがわかった。 以上から平成25年度は、1,のサーベイに関しては90%の達成度であった。他の2から4は、ほぼ80%以上の達成度であった。今年度も25年度の研究実績からのプラス部分だけでなく、25年度の実績の補充も含めて拡大していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、研究開発のスピルオーバーに関する分析を吸収力仮説を考慮して2部門の一般均衡モデルを作成し、シミュレーションを中心にした実証分析をおこなうという計画である。 より詳しくは、1,一般均衡の動学モデルの理論文献、実証研究、シミュレーション分析の先行研究の整理と問題点の抽出をおこなう。このモデルは内生的成長モデルの一種であるため内生的成長モデルのサーベイになっている。また寡占、独占的競争の不完全競争市場も扱うのでそのサーベイもおこなう。2,理論モデルを構築する。1,の先行研究の整理をふまえて、オリジナルなモデルを構築する。研究開発や特許を含んだ不完全競争を企業がおこなっているもとで、一般均衡的なモデルを異時点について作成する。3,2で構築されたモデルをもとにしてシミュレーションが可能なモデルに特定化する。さらに各種のシミュレーションをおこなうことにより、政策提言が可能にする。またシミュレーションだけでなく、シミュレーションを補完する統計的な分析も合わせておこなう。 平成27年度は研究開発のスピルオーバーに関する分析を吸収力仮説を考慮して2部門の一般均衡モデルを作成し、シミュレーションを中心にした実証分析をおこなうという計画であったが、この年度ではさらに多部門の動学モデルを作成する。統計的な実証分析をおこなうとともに、いろいろな政策シミュレーションを可能にする。 より詳しくは、1,2部門からにさらに3部門さらに多部門のモデルに関しての先行研究の整理と問題点の方向付けをおこなう。2,1でおこなった先行研究の概観から発展させて実際のモデルを構築する。3,2で作成された理論的なモデルをもとにしてシミュレーションモデルを構築する、さらに各種のシミュレーションをおこなっていろいろな政策分析をおこなう。また一般機構的なモデルだけでなく部分均衡のモデルも補完的に構築していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究予定と比べて、データーの作成と国内および海外出張に関して、研究の変更が生じたため次年度の使用が生じている。第一にデータの作成に関しては、特許および研究開発に関してのデータの開発をおこなった。企業レベルの基本データの作成は完成したが、特許に関しては、そのデーター数が極めて多いためデータベースの完成がまだ数産業に関してだけであり、分析対象である産業がまだ残されている。このためデータ作成のためのアルバイトの使用とデータのコンパイルが必要なくなってしまった。第二に実証分析と理論的な分析の論文と書籍を発行したが、完成に予定よりも時間がかかったために海外出張と国内出張に関して、発表が不可能になってしまった。このため出張費の使用がなくなってしまった。また実証分析用の統計計算ソフトに関しても論文、書籍の発行が遅くなったために新たな分析にはいることができず、購入して準備ができなかった。 第一に実証分析のためのデーターベースの作成に使用する。特許のデータに関してのデータベースの作成が完成していないため、その完成のためにデータの入力補助が必要である。またデーターの簡単な加工も必要であるためアルバイトを使用する。データの作成が高度な部分があるため特許の専門業者にその作成を依頼する。そのための費用が必要になる。第二にデーターの完成の後に統計的な分析が必要になる。そのため計量経済分析ようの統計ソフトをバージョンアップしたり新たなものを購入する必要が生じている。したがってそのために予算を使用する。第三に資料の購入が必要である。統計分析用のソフトに関してはプログラム等に関しての資料が必要になる。各種の計算に関してそれぞれの資料が必要になるためその購入費用が必要である。最後に旅費が必要である。論文作成の後各地での発表や意見の交換およびコンファレンスでの発表がありその旅費が必要である。
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